土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」を投稿しました!

 このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイートをご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、公務員試験の小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください。

 今週ピックアップするのは、次のニュースです。

 住宅ローンの控除率を縮小へ 22年度税制改正 自民党税調方針

 これに関して、私は次のようにコメントしました。

 住宅取得控除は、これまでずっと拡大路線にあったが、いよいよ修正される。既存の減税見直しも実質的には増税と同じ増収をもたらす。不公正な減税を見直すことも大切。

  住宅取得控除とは、住宅の新築購入や増改築などでローンを組む場合、その残高の1%を支払う所得税から控除してくれる仕組みです。住宅ローンの返済における金利負担を軽減することによって住宅取得を促進し、景気対策とする目的があります。あるいは、新築や増改築で良好な居住環境を提供し、耐震化などの安全性向上にも寄与する面もあります。
 今回の対応は、控除の割合を残高の1%から0.7%に縮小するものです。住宅ローンの金利は変動金利で1%未満と超低金利が続いているので、住宅取得控除の1%という水準は金利以上の減税効果となります(変動金利とは、市場での金利変動によって住宅ローンの金利も変動するものです。また、住宅ローンには固定金利という仕組みもあり、一定期間(5年、10年、20年など)が金利が固定されます。変動金利は低金利の時期は負担が減らせますが、金利高騰のリスクが常にあります。これに対して、固定金利は金利高騰のリスクを一定期間避けることができますが、変動金利に比べると負担は少し増えます)。つまり、現在の住宅取得控除は実質的に金利分だけでなく元金分まで控除されることになるので、「金利負担の軽減」という趣旨を逸脱してしまっているわけです。そのため、住宅ローンを組む必要がない人まで無理して住宅ローンを組んで金利負担を過剰に低減させたり、また、住宅取得控除の期間中は繰り上げ償還をせず、期間終了後に多額の繰り上げ償還をして控除をフル活用したりと、やはり税制の趣旨に合わない行動を招くと指摘されています。そこで、今回の引き下げが検討されているのです。

 住宅取得控除は、これまで控除の期間や割合の変更が何度か行われてきています。今年も期間が10年から13年に延長され、90億円の減収と試算されています。これは、消費税率が引き上げられたことによる負担の増加に対応したものになっています。

 今回の対応については、「実質的な増税ではないか」「住宅を買うなと言うのか」といった批判の声があります。実質的な増税という指摘は、まさにそのとおりだと思います。増税は課税の引き上げだけでなく減税の引き下げでも生じるからです。しかし、課税の引き上げは消費税率でも何度か先送りしたように、実行には大きなハードルがあります。岸田政権でも、消費税率の引き上げはまったく考えられていないようです。これに対して、後者は比較的容易に行えます。住宅取得控除の引き上げは、前者の対応が難しい状況を後者の対応で打開するもの、と見ることができます。財政健全化を進めるためには、やむを得ないのではないでしょうか。
 しかし、これは「住宅を買うな」ということではありません。住宅取得控除の趣旨にできるだけ近づける対応なので、むしろ、不公正な水準にまであった減税を見直し、あるべき姿を取り戻すことを意味しています。住宅取得控除は金利がもっと高い時期からあったので、その頃はまさに金利負担の軽減に寄与していました。しかし、政策的に超低金利に誘導されている現在、依然として旧来の水準(さらに上乗せもされている)で住宅取得控除が続いてきたために、金利負担どころか元金負担まで軽減するという事態になってしまいました。控除の割合を見直すことは制度の趣旨から必然であり、批判されるべきは超低金利が長く続いている今頃になって行うこと、つまり遅すぎたことではないでしょうか。元金負担の軽減まで既成事実化してしまっているから、「住宅を買うなと言うことか」という批判が出てくるのだと思います。


 いずれにしても、時を戻すことはできません。ようやく住宅取得控除の見直しが行なわれることは、今さらではありますが良かったと思います。また、もし住宅ローンの負担増に大きな反発が出てきた場合は、控除の割合ではなく期間のの見直しで調整する方法もあります。住宅ローンを10年で組む人はほとんどいないので、控除の期間を15年や20年に延ばすなどして、負担の増加を抑えつつ金利負担の軽減という趣旨を守ることもできるでしょう。もちろん財政健全化を図るためにはむやみに延長することはできませんが、一方的な減税廃止にならないようにする配慮も加えて、バランスのとれた措置になることを期待したいと思います。

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