高校生までの勉強は、教科書や参考書を読み問題集を解いて正答率を高めていくことで成績が上がりました。つまり、正解がある問題に対して、その通り正解ができるかどうかが重要だったのです。

 しかし、卒業論文になるテーマでは、必ずしも正解があるとは限りません。むしろ、正解がない問いに自分なりの正解を出し、読み手に同意を得ることが重要です。言い方を換えれば、自分が出した正解の内容よりもどれだけ同意を得られる材料を用意しているかが重要ということもできます。

 基本書にも、書いた人なりの正解と同意を得るための材料が盛り込まれています。それが正解と思うかどうかは、読む人が判断することになります。卒業論文を書く前に、まずは読み手として正解かどうかの判断を自分でしてみましょう。そこで、基本車を読みながら同意できると同意できない点を整理してみることをお勧めします。どのような主張でも、全て同意できることも、全て同意できないことも、おそらくないでしょう。同意できる点と同意できない点を整理することによって、自分の意見がどういう位置にあるのかが明確になってきます。

 卒業論文を書く前に基本書を読むことは、情報収集の意味もありますが、基本書の書き手と対話することによって自分の考え方を引き出す意味が大きいです。したがって、基本書を読むことがすでに書く作業の一部になっていると言えるでしょう。