木曜コラム「公務員の仕事」第1回:税務部門-新人として入った時
1993年、私が市役所に入って最初に配属されたのが税務課だった。あれから30年近くになるが、当時の記憶を振り返ってみたい。
税務部門にもいろいろあるが、私が配属されたのは住民税の課税が主な業務であった。しかも、4月はピークとも言えるほど忙しい時期である。なぜかと言えば、2月から3月にかけて確定申告があり、前年の収入額などを集計してから個人の課税額を計算し、納付書を発送するのがこの時期だからである(とはいっても、残業はそれほど長くなかった。上司のリーダーシップで帰る時間の目標を決めて、ダラダラ残らずにテキパキ仕事ができたのは幸運だった)。
こうした時期に何も知らない私が新人職員が入った。もちろん、何も知らないので戦力にはならない。しかも、私が入った代わりに戦力のある職員が離れる。トータルの人数はプラスマイナスゼロだが、チームの総合力は大きく下がる。しかも、税金だから計算ミスなどしないよう、慎重に、チェックを重ねなければならない。緊張感のある中に何も知らない若者が入るのは、なかなか辛いところがあった。
仕事を進めるだけなら、計算のチェックなどをしても戦力にはなるだろう。しかし、制度を知らなければ仕事の意味が理解できない。そこで、上司は私に「税務六法」や「要説住民税」などをしっかり読み、住民税の仕組みを学ぶよう指示された。忙しい時期にも関わらず、長い目で仕事を習得するように指導いただいたのは、とても良かった。
配属されて1週間ほど経ってから、同期の職員全員が新人研修に行くことになった。県の研修施設で地方行政の仕組みや接遇(電話応対や来客対応のマナーなど)などを学ぶ1週間ほどのプログラムで、同期との絆、他の市町村職員との交流もここで生まれる。研修中は職場に行くことがないため、さらに戦力ダウンとなるが、やむを得ない。研修を受けられることに感謝し、しっかり学んでくることを誓った。
ちなみに、同期の職員は定年退職するまで貴重な仲間でありライバルでもある。全員が顔を合わせる機会は新人研修くらいしかない場合もあるので、ここでしっかり絆を深めておきたい。
研修を終えて職場に戻ると、仕事はさらにピークの時期になっていた。予定どおり納付書を発送できるよう、スケジュールを組んで着実に進めていく。ほとんどはコンピュータで税額を計算し納付書もプリンターで印刷されるが、最後のチェックは職員が見てミスがないように細心の注意を払う。神経を使う仕事であったが、あえて上司が楽しい雰囲気を作ろうとしてくれて、何とか全員で乗り切ることができた。
6月上旬に無事に納付書を発送でき、ようやく多忙と緊張感から解放される。その日の喜びと達成感は、もしかすると1年で最も大きいかもしれない。