日曜コラム「マイ・オピニオン」第9回:大学のオンライン講義で分かったこと
新型コロナの蔓延で、昨年度の卒業式や今年度の入学式が中止になった。学生は友人との別れを惜しむ間もなく大学を旅立ち、新入生は大学生活への期待と不安を抱けぬままキャンパスにさえ入れない状況になった。思い起こせば昔のことのように感じるが、そのまま講義もオンラインとなり、それもまもなく終えようとしている。学生だけでなく教員にも戸惑いがあるなかで、まずは私自身、ここまで来れたことにホッとしている。
だが、東京都の新規感染者数は再び増加傾向になり、まだオンライン講義は続きそうな気配である。夏休み中に反省点を洗い出し、次の講義に備えておく必要がある。そこで、大学のオンライン講義で分かったことをメモ的にまとめておきたい。
大学では、実に幅広い分野、幅広い手法で講義やゼミナールを行っている。だから、自分のオンライン講義を振り返っても、それがすべてではない。私の場合、通常の講義を大きく変えることはなかった。動画配信のシステムを使って、講義時間になると自宅から講義を行なった。スライドの変更も最小限で済んだ。
最も難しかったのは、学生の反応をつかむことである。学生の顔が見えると話も乗ってくるし、反応が薄ければ話を変えることもあるのだが、チャットだけでは反応がなかなか分からなかった。講義の最後に学生から「ありがとうございました」とチャットで寄せられて、初めて反応をつかむような感じであった。
また、期末試験をすることも難しい。特に「持ち込み不許可」の試験は、教員が持ち込みを確認できない。そこで、今学期はレポート中心に切り替えた。採点はレポートの方が大変で、それは構わないのだが、試験は「覚える」ことで乗り切れてもレポートは講義で示した知識を「どう活かして自分の意見を述べるか」が問われる。そのため、学生にもハードルが上がり、大変だったのではないか。講義内容もレポートを意識したものにしなければならないだろう。
また、何よりも学生同士のコミュニケーションが極端に制約されることが大変だったのではないか。これはサークル活動や食堂のような場だけでなく、講義にも関係する。試験前に学生同士で覚えたことを確認し合っている姿、レポートの内容について情報交換をしている姿、講義で聞き逃したことや分からないことを教え合う姿など、通常の講義では当たり前にできた学生同士のコミュニケーションがオンラインではほとんどできない。やはり学びは周りから多様な刺激を受けることで深まっていくから、こうした制約は大きいと思う。
一方、オンライン講義で良かった点もある。質問が出やすいことだ。チャットなら、その場で入力しすれば質問が届くし大勢の学生のなかで発言しなくてもよいから、通常よりも多くの質問があったのは良かった(ただ、ぶたんは学生同士で話していたことかもしれないし、文字を入力する手間がかかるから、会話で質疑する機会も用意すれば良かったと感じている)。
また、ゲストの方に来てもらいやすくなったのも良かった。通常は電車での移動が負担になるが、オンラインならそれがない。もちろん、臨場感は得られないが、話を多く聞くことができるのは大きなメリットだと思った。そこで、今学期は予定よりも多くの方にゲストでお越しいただいた。
もちろん、これは私の感想である。英会話のように多数の学生とのコミュニケーションを要する講義(1対1なら某CMのようにオンラインでも可能だと思うが…)、板書や実験を要する講義、ゼミナールでのグループディスカッションは、不可能ではないもののカバーしきれない部分もあり、先生方もたいへん苦労されていると思う。今後は、先生方の経験や学生からの意見を踏まえて、次の学期に備えていきたい。