土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」を投稿しました!
このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイートをご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、公務員試験の小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください。
今週ピックアップするのは、次のニュースです。
児童手当の支給要件「世帯収入合算方式に」 10万円給付巡り、与党内から求める声
これに関して、私は次のようにコメントしました。
世帯のあり方が変わってきたから見直しを検討、ではなく世帯のあり方を変える仕組みとして先行的に見直しをしてほしかった。
児童手当は医療費負担の軽減や保育サービスなどと並び、子育て支援策の中軸をなしてきました。長らく続いてきた児童手当が今回の記事のように急に注目されるようになったのは、新型コロナ対策として子育て家庭に10万円を支給する際、所得制限をするかしないかで政治判断が行われたからです。10万円を支給する際、「バラマキ」との批判が高まるのを少しでも抑えるには所得制限が必要ですが、所得の確認等に時間を要するためスピード感が欠けてしまう、そこで、既存の児童手当で行なわれている所得制限を活用し、両立を図ろうとしました。しかし、そもそも世帯主の所得で判断される児童手当の所得制限が果たして適切なのか、という議論が出ることになったわけです。確かに、世帯主が所得制限を少し超えた場合と、共働きで夫婦とも所得制限を少し下回る場合では、後者の方が世帯としての所得はほぼ倍になるにもかかわらず給付金は前者に支給され、後者に支給されない、これではバラマキどころか格差拡大、困っている人に届く制度なのか、との批判が出るのは免れないでしょう。実は、児童手当も同じような仕組みで運用されていた、というので、飛び火することになりました。
記事によると、児童手当の制度が創設されたのが1972年、当時は専業主婦が多く、世帯主の収入=世帯の収入だったことから実質的には問題ありませんでした。しかし、徐々に共働き世帯が増え、1990年代以降に専業主婦世帯を上回っています。そうした時代の変化に対応した見直しが必要、との判断から今回の議論が政党からも出るに至りました。
しかし、私はここに大きな違和感を覚えます。もっと早く判断できたのではないか、と思うのです。税制は、時代の変化を確かに反映するものなので、今回の議論も必要だとは思います。しかし、税制は時代の変化を促すものでもあります。
子どもに関する所得税の扶養控除は、手当の創設や高校教育の実質無償化などの理由で、廃止されました。控除による負担軽減から支給による軽減にシフトしたことになるのですが、前者の仕組みは高所得者の軽減が大きくなっていたことも背景にあります。つまり、格差の是正にならないのです。
これに対して、後者の場合は支給額が同じならば低所得者への恩恵は大きくなります。しかも、実際には支給の条件にも所得制限があって、富裕層は支給額も少なくなります。なので、格差の是正はさらに強く働くことになります。このように、税制(負担)と支給(受益)は一体となって、格差縮小という変化を促したのです。
ここで注目したいのは、高校教育の無償化です。これに使われる所得制限は、世帯の収入です。ただし、専業主婦世帯の場合は所得制限が少し緩やかになっています。児童手当と同じ系統の高校教育無償化が、すでに世帯収入で判断されているのに、なぜ児童手当が旧態依然のままだったのか、改正のタイミングを見逃してしまったように思えてなりません。
新型コロナ対策によって、さまざまな給付制度が創設・拡充されました。その多くで「スピード感」が強調されていますが、コロナ前から見直すべきだったものが温存されることが「スピード感」と呼べるのか、大いに疑問があります。コロナ対策は読めないところがあるのは仕方ありませんが、マスコミが政治家に「対策が失敗したら責任は?」といった質問をすると、政治家が「仮定の話には答えられません」などと言うシーンをよく見ました。これは、「そのことが起きた時に考えます」と言っているのと同じです。もちろん政権内部では仮定の話はある程度しているのでしょうが、「起きた時にすぐ対応する」ことが真の「スピード感」ではないと思います。起きる前から考えて対応しておき、いざと言う時に動けるようにしておいて欲しいです。今後、新型コロナの第6波だけでなく、首都直下地震なども懸念されています。これらを「仮定の話」と捉えてしまっては、人災として大きな被害をもたらしかねません。今回の児童手当をめぐる「家庭の話(!)」を教訓に、今後のあらゆる政策で事前の対応を十分にとってほしいです。