土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」-住民の苦情(クレーム)は報道されるが、感謝の気持ちは報道されない
このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイート(リンク)をご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、公務員試験の小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください。
今週ピックアップするのは、次のニュースです。
除雪対応に苦情1400件「想定超える豪雪、対応仕切れず」滋賀・彦根市長が陳謝
これに関して、私は次のようにコメントしました。
苦情の部分がどうしても強調されてしまうが、こうした事態に職員が総出で対応していることへの感謝の言葉も多い。だが、それが報道されることはほとんどない。
住民の生活を支える地方公務員、特に市町村の職員に対して、市民の苦情は多く寄せられます。住民が困っている時に助けてあげられない時には「対応が遅い」「なぜ助けてくれないのか」と感じ、つい職員に怒りをぶちまけてしまう、といったことになります。もちろん、制度や体制が整っていないのは職員の責任ではないのでしょうが、自治体として準備ができていないのか、国として対策がなされていないのか、さまざまな背景があったとしても冷静に考えられる状況ではなく、沸き起こった感情はどこかにぶつけるしかないので、応対した職員が怒られるしかないのです。
以前は、「役所の窓口は態度が悪い」とよく言われていました。お客さん相手ではないから、融通が効かないから(人によって対応を変えれば不公平になりかねないが)、などが主な理由でしょう。しかし、最近は、少なくとも前者に関してはまったくありません。窓口対応の研修をしっかり受けていますし、対応の大切さを職員が十分に理解しています。もちろん、窓口に来られた方は「お客様」という認識ではないので民間企業の応対とは違うかもしれませんが、「市民」として寄り添うべき方なので悪い態度で接することは民間企業よりも言語道断と言えるでしょう。市民一人ひとりが求めていることにどう合わせていくかは難しいのですが、窓口に見える方に対する職員の意識が足りないといったことはほとんどないように思います。
問題は、突然訪れる事態に行政機関として対応しきれなくなる場合です。記事のような大雪が典型ですが、大規模災害や昨年からの新型コロナ対応なども同じでしょう。大雪に見舞われた場合、交通機能が麻痺したり、物流が寸断されたりして生活が脅かされます。一刻も早く回復したいのは市民だけでなく公務員も同様ですが、激しく降り積もる雪になかなか対応が進まず、市民からは「何をしてるんだ!」とのお叱りを受けるのです。もちろん、公務員は手を抜いているわけでは決してないのですが(むしろ対応が進まないことに対して市民よりも公務員の方がイライラしているかもしれません)、目の前で雪が降り、除雪がまったく来ない状況を見続けていると、誰でも自分の無力さと怒りを次第に覚えてしまうのは仕方ありません。また、遠くで除雪作業が行われているのが見えたりすると、「なぜうちには来ないんだ!」となってしまうでしょう(除雪全体が遅れるのは許せても、自分だけ取り残されるのは許せない、という気持ちはだれにでもあります)。
メディアは、こうした点を好んで取りあげます。新型コロナ対応でも、窓口の混乱や手続きの遅れなど、苦情を煽るような書き方が目立ちますし、苦情そのものも記事になります。もちろん、世の中の問題を浮き彫りにするのがメディアの使命でもあるので、仕方ない面もあるかもしれません。
しかし、一方でこうした状況を温かく見守ってくれている市民、わざわざ感謝の気持ちを伝えてくれる市民も多くいます。ただ、それがほとんど取りあげられることはありません。市民から感謝の手紙が寄せられることもあります(公務員は大切に持っています)。公務員自身も地域で生活しているケースがほとんどなので、自らも大雪に見舞われながら歩いて通勤したり、自宅の周りだけでなく人や車が多く通る道を率先して除雪したり、周囲で気づいたことにすぐ対応したりと、公務員としての使命感を持って行動しているからです。そうした行動に触れて、感謝の気持ちを伝えてくださる人もいるのです。大変な仕事ではありますが、そんな時こそ「公務員になってよかった」と思える瞬間だと思います。
残念ながら、そうしたことはなかなか記事になりません。それはメディアの問題なのか、そうした記事を好む読者の問題なのかは分かりません。それでも、記事になるよりも直接気持ちを伝えられることの方が公務員には嬉しいので気にはなりません。公務員を志す人には、ぜひ苦情に臆することなく自分でできることを住民のために惜しまず行う、誇りある仕事であることを理解してほしいと思います。