土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」を投稿しました!
このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイートをご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください。
今週ピックアップするのは、次のニュースです。
SDGs国連採択6年 持続可能な開発、自らの問題と認識を 当時の首席交渉官に聞く
これに関して、私は次のようにコメントしました。
SDGsについて面接で聞かれたり小論文を書いたりする時に、とても参考になる内容が書かれています。必見!
コメントは「とにかく読んでみてね!」ということしか書けませんでしたので、今回は現役地方公務員の方や地方公務員をめざす学生さんの参考になるような説明をしたいと思います。
まず、私が注目した内容は次の発言です。
「各ゴールの相互の関連性を意識して政策を実施する必要がある」
インタビューでは環境と経済の関係という点から触れられていました。確かに、これまでは「環境VS経済」という発想があり、いずれを優先するのかというバランスの問題として考えられてきました。「環境対策のコストをかけなければ利益が出るのに…」という認識があるのです。しかし、これからは「環境が守られなければ経済そのものが成り立たない」という考えに改める必要があります。確かに生きていける環境がなければ豊かにもなれないですよね。もはや、バランスを論じて済まされる時代ではないのです。
私がここで述べたいのは、こうした考え方は環境と経済にとどまらずSDGsすべての目標にも当てはまる、ということです。すべての目標が連動し、バランスというよりも一体的に追求していくべきだと思います。
しかし、地方公務員にはこうした考え方は苦手です。公務員は縦割り思考に囚われてしまっていて、それぞれの組織に求められる役割が明確に区分され、配属された職員が分担して役割を果たしています。細かな仕事はこうした方法でも良いかもしれませんが、その背景にあるビジョンや理念は、縦割りの発想で打ち出すことはできません。視野が狭いものになってしまいます。そのため、地方公務員の仕事は「公共サービス」であるべきなのに、限定された公共性しか発揮できなくなってしまうのです。
SDGsは、こうした縦割り思考を戒めるきっかけにもなりります。17の目標すべてを同じウェイトで捉える必要はないと思いますが、理念やビジョンに関係する目標を取り込み、時には独自の目標も加えることで一つのビジョンや理念を打ち出して、地方行政に活かしていくことが大切だと考えます。
次に注目したいのは、SDGsの今後の課題です。インタビューでは次のように3つ述べられています。
「今後の課題は主に3点あると考えている。SDGsはパンデミック(感染症の大流行)に触れていない。交渉当時は新型コロナのような事態が起きるという警戒感がなかった。2番目は科学技術の適正な使用について踏み込んでいないこと。AIなど先進技術は途上国の問題解決に役立つこともある半面、軍事的用途にも使われる。3番目は不平等の問題。コロナで格差が広がり、貧困撲滅が非常に難しくなっているという報告書を国連が出した。国際社会に不平等を是正するメカニズムが十分には備わっておらず、放置すれば社会に与える負の影響が大きい」
いずれも重要な指摘だと思いますが、地方公務員の視点から捉え直してみましょう。第1は、パンデミックそのものも今後の課題ですが、もっと広げてみると「何が起こるか分からない」「あらゆることを想定しなければならない」と考えることが重要ということになります。国内では東日本大震災以降も災害が多発し、事前の想定と対策が重要だという教訓をすでに得ていまう。パンデミックもこの文脈で捉えることで、より広い分野に応用できるのではないでしょうか。
次の科学技術については、興味深い指摘です。私たちの生活は、これからも科学技術の恩恵で大きく変わっていくでしょう。それによって解決する課題もたくさんあると思います。しかし、軍事的用途など負の側面にも注意を促しているのです。これまでも軍事的用途から派生して私たちの生活に浸透しているものはたくさんあります。インターネットのルーツも軍事目的だったのではないか、という指摘もあるくらいです(諸説あるようですが)。今後、AIといった未知の領域、人間の知性を超えるような次元が視野に入ってくれば、軍事目的との結合は大きな驚異になりえます。だからといって止めることが良いかどうかは分かりませんし、地方自治体は軍事に直接かかわることはありませんが、広い視野を持って科学技術を捉えることが大切だと思います。
最後の不平等の問題は、激動の時代だからこそ新たな局面が生み出されると思います。SDGsには「誰1人取り残されない」という高邁な理念があります。これも不平等の問題を意識しているでしょう。しかし、すでに存在する不平等だけでなく、未知の不平等もこれから顕在化してくるのではないかと想像します。例えば、新型コロナのパンデミックでも自粛要請における不平等や支援・補償策の不平等、GoToなど経済対策の不平等、ワクチン接種の不平等など、さまざまな不平等を生み出しています。さらに多様な不平等が顕在化していけば、不平等への対応でも新たな考え方が求められてくると思います。格差の是正は主に国の役割とされていますが、多様な不平等に対応していくためには「一人ひとりに寄り添う」地方公務員の役割も重要になってくるのではないでしょうか。
SDGsは2030年にめざす社会の姿を描いています。あと8年ちょっとです。その間に、さらに課題が見えてくるでしょう。しかし、決してSDGsの重要性が色褪せることはありません。そして、2030年年以降も、引き続き解決を模索していかなければなりません。激動の時代だからこそ未来をしっかりと見つめ、私たちが望む方向へと舵を切っていく必要があります。SDGsが打ち出した理念を堅持しつつ、新たな課題を捉えさらに発展させていくために、地方公務員が果たすべき役割も重要であると思います。