土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」-アベノマスクの保管現場から見える、政治の本音
このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイート(リンク)をご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、公務員試験の小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください。
今週ピックアップするのは、次のニュースです。
行き場なき「アベノマスク」含む布マスク 保管倉庫に記者が入った
これに関して、私は次のようにコメントしました。
捨てるのも問題、捨てないのも費用がかさんで問題、出口がなく彷徨う。スピード感を持って進めたことを、どこまで許容できるかだと思う。
アベノマスクは、良い話を聞いたことがないくらい、ほとんどの人に受け入れられなかったように思います。まず、タイミングが良くありませんでした。新型コロナの蔓延で人々が大きな不安に陥り、マスクが不足した時期は確かにありました。しかし、国民に届ける頃にはほぼ解消されていました。アベノマスクが届いたころには、多くの人にとって不要のものとなっていたのではないでしょうか。また、マスクの品質にも問題があったようです。これらの結果、使われることなく処分されたり、施設などに寄附された人も多かったと思います。私も未だ開封していません。
今回の記事は、配布されずに余った大量のアベノマスクが処分されずに倉庫に保管され、多額の保管費用を払い続けている、というものです。こうした記事が出ることで、今なおアベノマスクは評判を下げているように思います。
アベノマスクへの政府の評価ついては「マスク不足が解消され、価格が下がった」としているようです。国民の意識と乖離があるように思いますが、この評価が記事のような費用をもたらしていると思えてなりません。つまり、アベノマスクを処分すれば「作ったことが間違いだった」ことを政府が認めたことになりかねない、だからそう思われないように保管しているように見えます。つまり、補完の目的が正しくない可能性があります。
もちろん、大量の在庫を政府が持ち続けていれば、今後再びマスクが不足しても国民にすぐに届き、価格も上げられない、という見えない圧力となりえます。そうなる可能性も否定できないので、アベノマスクが本当に誤りだったかどうかは慎重な判断が必要です。しかし、「間違いだったと認めたことになるから止められない」という政府の姿勢は、これまで多くの政策に見られるので、アベノマスクにもあるのではないかと懸念せざるをえないのです。
ほとんど車が通らない地域に整備される4車線の立派な高速道路、年に1回の大規模イベントのために多くの座席と豪華な設備を要する文化ホールなど、特に大規模な公共事業は走り出したら止められないものの典型と言えます。作り始めたものを途中で止めれば、それまでに要した経費が無駄にになり、政治家としての責任を問われることは避けられません。だから、失敗すると分かってもとにかく最後まで貫き通すことになるわけです。そして、完成した施設が十分に利用されなかったとしても、先の高速道路や文化ホールも、地元建設業の振興には寄与するでしょうし、ヘビーな利用者にとってはメリットも大きいはずです。政策の評価には幅広い視点が必要で、見方によっては良い・悪いの判断が分かれますから、良い面だけを強調すれば、失敗の部分を糊塗することもできるでしょう。
しかし、アベノマスクがそのような状態でダラダラと多額の支出を伴って保管され続けているとすれば、大きな問題です。保管しなくても良い方法があるのではないでしょうか。仮に、今後コロナ禍が再び襲ったとしても、紙マスク(布マスクよりも蔓延防止の効果が高い)をすぐに調達できる体制づくりをしておけば、わざわざアベノマスクを保管しなくても良いわけですし、余剰分を国が保管するのではなく自治体(おそらく都道府県)に配布すれば、より迅速に対応できるでしょう(受け取る都道府県側は困るかもしれませんが…)。このまま費用をかけ続けて保管すれば、このような、より効果が高いと思われる取り組みさえできなくなってしまうように思います。結局、誰にとっても良いことがない、という結末になるかもしれず、コロナ禍の再来とマスクの不足を願うような「ありえないこと」までイメージしかねません。まさに、迷路を彷徨っているように思えてなりません。
もちろん人の気持ちは誰にも分かりませんので、少し言い過ぎなところもあれば(そうであることを願います)想像の範囲としてお許しいただきたいと思います。ですが、こうした極端な想像さえできてしまうほど、今回のニュースは大きな教訓を残す可能性がある、ということを理解する必要があると思います。
今回は、コメントの前半部分に焦点を絞って述べてきました。後半の「スピード感を持って進めたことを、どこまで許容できるか」については、またの機会(このコーナーではないかもしれませんが…)あらためて述べたいと思います。