ここに注目!公務員が気になるニュース:住民にとって行政は監視の対象なのか?
このコーナーでは、今週ツイートしたニュース記事の中から特に印象に残った1つをピックアップして、掘り下げてみたいと思います。
今週は、次の記事を取り上げたいと思います。
「区長は代わったのに」…廃止になった杉並・下高井戸児童館 反対の声を上げた母たちが感じた「行政の怖さ」
この記事について、私は次のようなコメントをしました。
記事の最後の言葉は、まさにそのとおり。住民は当事者意識を日頃から持って置く必要がある。
最後の言葉が重い、と先に述べたが、行政が勝手に何かを進める怖い存在かどうかは疑問。行政側の発信が届かないまま話が進むことも多い。
上記のように、今回は2回に分けてコメントをしました。率直に感じたことを詳しく述べたいと思います。
今回は、まず記事に掲載された最後の言葉が印象的でした。引用すると、次の通りです。
「選挙で投票して終わりでなく、区政を監視し、おかしいと思うことはその都度声を上げていかないと、自分が当事者だと気づいた時に手遅れになってしまう」
選挙で投票して終わりではない、というのはまさにそのとおりだと思います。投票率が下がっているのは、投票以外の多様な方法で自治に関わる機会があることも一因でしょう。むしろ、住民と自治体との日頃のコミュニケーションの方が重要だと考えます。選挙のように住民が権限を強制的に行使できる手段ではありませんが、密なコミュニケーションが両者の信頼関係と自治の強化をもたらすはずです。
ただ、後半の記述は、地方公務員にとっては困惑するところもあります。特に「区政を監視する」という言葉です。行政の意のままに物事が進んでいく怖さに触れた後の言葉ですが、行政がこのような大切な取り組みを意のままに勝手に進めているわけではなく、議会の承認に基づいています。設計費が予算措置されているのは、議会が承認したからであり、行政側は承認された予算を執行しなければなりません。行政のトップである区長が交替しても、それは変わらないわけで、廃止の条例案も一連の流れにあるものだと思います。
条例案も議会で可決され、行政はそれを実施する主体です。住民の要望に対しても、その範囲内で最大限の対応をしようとしているので、もっと評価されても良いのではないかと思います。記事にあるような「行政の意のままに」ということでは、ないはずです。
そして、住民の要望をできるだけ良い形で実現するには、やはり住民の側が日頃から当事者意識を持つ必要があります。行政は勝手に進めているのではなく、住民のニーズについて最大公約数(なるべく多くの方が納得できる内容)を実現できるよう、取り組んでいるはずです(そうでなければ、区長も議会も住民の支持を得られず落選してしまいます)。ただ、最大公約数に入り切らないニーズへの対応をどうするかが難しく、さまざまな住民の要望をできるだけ取り入れて調整することになります。したがって、そうした要望を早い段階で、できるだけ多く取り込むことが必要で、住民の側もそうした機会を把握して行動することが重要になるわけです。
しかし、行政側もこうした意識決定の際に住民とのコミュニケーションを取ろうとしたり、重要な政策を住民に発信したり、さまざまなことを行っていますが、なかなか反応が得られず苦労しています。もちろん、発信の仕方や内容にも問題があるとは思いますが、記事にあるように住民に当事者意識が必ずしも強くないことも関係していると感じます。そうした中で、「知らないうちに意のままにしようとしている」と言われてしまうのは、必ずしも本意ではないでしょう。ましてや「監視しないといけない」存在ではないはずです。
住民と自治体は、本来は一心同体のはずです。そのために、建設的な方向性を持って関係構築を図る必要があると思います。