火曜コラム「オススメ書籍」第10回:磯崎初仁・金井利之・伊藤正次著「ホーンブック地方自治(新版)」北樹出版

 地方自治に関するテーマを広範囲に網羅した、学生や自治体職員向けのテキストブックである。もちろん、住民にとっても面白い内容だろう。

 本書は、6つのパートで構成されている。第Ⅰ部「制度論」では、地方自治の制度の現状と歴史、地方分権改革の経緯や成果、都道府県と市町村をめぐる諸制度が簡潔に描かれている。第Ⅱ部「機構論」では、自治体の統治構造についての総論と、首長・議会の役割や権限、活動の実態や課題について述べられている。第Ⅲ部「政策論」は、ボリュームがある。自治体の政策形成プロセスに関して、総合計画や法務の役割を述べるとともに、代表的な政策分野として産業政策や地方創生、まちづくり、環境政策、福祉政策、子育て支援、防災政策などを紹介している。それぞれの分野でどんなことが行われているかが効率的に理解できる。第Ⅳ部「管理論」では、内部管理として組織や財政、人事管理、行政統制について述べている。そして、最後の第Ⅴ部「住民論」では、住民の捉え方やコミュニティ活動、住民運動や市民参加について述べている。

 本書を読んでまず感じたことは、政策論に多くを割いていて、この一冊で地方自治そのものだけでなく地方自治を活かした政策のあり方まで理解できることである。地方自治を制度として理解しても、仕組みだけでは身近に感じられないし、それが何に役立っているのかがイメージしにくい。270ページ程度に分量を抑えながら、幅広い分野に言及したところが素晴らしいと感じた。

 そこで、本書で地方自治の全体像を把握し、さらに関心のある分野は専門書などに進むのが良いのではないだろうか。

 また、コラムも興味深い。著者の専門分野で突っ込んだ議論やニッチな分野の紹介が行われている。テキストの場合、著者の見解はあまり前面に出さず定説や概要の紹介にとどめることが多いが、錚々たる著者の思考に触れてみたいと思う人にも興味深い内容が盛り込まれている。テキストでありながら、攻めているる部分もある。

 地方自治に関係する人は、極端に言えば住民全員である。学生や自治体職員だけでなく、多くの人に読んでもらいたい本である。

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