金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第1回:目的を明確にして、前向きな姿勢で取り組む
金曜日のコラムをリニューアルし、文章やプレゼンの基本的な方法を述べることにしたい。対象のイメージは、主に卒業論文レポートを書いたり、学内外でプレゼンテーションをする大学生である(最近は学外でのプレゼンコンテストも多く開催されており、私のゼミ生も積極的に参加している)。しかし、現役の公務員も長めの文章を書く機会は少ない(私も、若手の時代に文章作成研修を受講したことがある)。そこで、社会で求められる文章力を高めたい人にも役に立つと思う。
初回の今回は、書く前の心構えとして「目的を明確にする」ことの重要性を述べておきたい。大学生にとって、レポートや卒業論文を書く目的は、まずは単位を取り、卒業をすることであろう。それは確かにそのとおりであり、私も否定はしない。しかし、それで社会に出て通用する文章が書けて、プレゼンができるようになるかと言えば、甚だ怪しい。社会で求められる論文やプレゼンのレベルが高いということもあるし、大学はその練習の場なのかもしれないが、単位や卒業を目的にすることによって学生自身が論文やプレゼンへの姿勢を消極的にしてしまい、自分でそのレベルを下げてしまう可能性がある。
例えば、何度も文章を読み返したりプレゼンのリハーサルなどをしたかどうかは、文章やプレゼンを見れば私でもすぐにわかる。漢字の間違いがあるものはチェックが足りないし、プレゼンの文字やイラストに細かな工夫が見られるものはしっかりチェックしているからである。単位を取るだけなら漢字の間違いは多少見逃してくれるかもしれないし、プレゼンの工夫が足りなくても減点はされないだろう。しかし、長い目で見れば、それでは済まないのである。
しかし、社会に出ると、論文やプレゼンの目的は、上司を説得する、課題解決策を示す、契約を勝ち取る、などさまざまであろうが、所属先の発展のために必要なことである。また、その発展に貢献できれば、自分自身の価値も向上し、あらゆる場で重宝されることになる。結局、自分のためになるのだ。だから、自分のために積極的な姿勢が不可欠である。大学でも、一部の学生は光る文章、プレゼンを提出してくる。光るものには社会人と同じような学生の積極的な姿勢が映し出される。
学生が「単位が取れればそれで良い」「卒業できればそれで良い」という目的意識で取り組むのと、「社会で所属先に貢献するための貴重な練習の機会」「社会で自分の価値を高めるための貴重な練習の機会」という目的意識で取り組むのでは、姿勢に大きな違いが出るこの姿勢の違いが、社会においてもその後の差を大きくする。
今後述べることになると思うが、文章やプレゼンのテクニックはもちろんたくさんある。しかし、それを発揮できるかどうかは、実際に文章を書き、実際にプレゼンをするかどうかで決まる。格好良く言えば「失敗を重ねた人ほど、その先には大きな成功が待っている」のである。床の上で泳ぎ方をいくら練習しても、速く泳げるとは限らない。実際にプールに入って泳いて、体に染み込ませなければならない。
レポートや卒論は、いわば泳ぐ人にとってのプールである。目的を明確にして、実際にレポートや卒論の執筆、プレゼンの作成に飛び込んでほしい。