火曜コラム「オススメ書籍」第15回:NHKスペシャル取材班著「地方議員は必要か-3万2千人の大アンケート」文春新書

私が講義で地方公務員の仕事について教えていると、多くの学生が議員に対する不信感を訴えます。特定の人物というよりも、納税者として見逃せない議員の行動が頻繁に報道されるからだと思います。「議会中に寝ている」「不適切な行為があっても給料が貰える」など、企業ではありえないようなことが議会で平然と行われている、ということです。そのため、「議員は(そこまで多く)必要ななのか」という意見も多く見られます。

報道されるのは国会議員の方ですが、おそらく地方自治体の議員も同じように見られていると思います。身近な地方のはずなのに、議員が何をしているか分からない、名前さえ知らない、という状況ではないでしょうか。したがって、本書のテーマに対しては「地方議員は(そこまで多く)必要ない」と、国会議員と同じように考えられているのではないかと思います。

しかし、これは漠然としたイメージです。実際の議員がどんな活動をしているのかは、あまり知られていません。本書は、地方議員に直接アンケートを行い、その本音を引き出した貴重な記録です。いわば、地方議員が自らの必要性に向き合うという、ある意味で過酷な内容になっています。

結果を総括すると、確かに議員の中には何のために議員になったのか分からないような人も、議員としてのあるべき姿を正しく理解していない人もいるようです。しかし、一方で「これではいけない」と、改革の必要性を訴え行動する人もいることが分かります。個人的には、愛知県犬山市で議長まで務めたビアンキ・アンソニー氏の行動が印象的でした。こうした人たちも、少なからず地方議員にいることもまた、事実です。

また、なり手不足という点にも興味深い考察があります。特に町村は報酬が少なく、大卒社会人の初任給程度です。もちろん昇給はありませんので、議員だけで生活することはできません。この点も意外と大きい要因だということが分かりました(別の章に書かれていますが、家族の反対も大きいと思います)。

さらに言えば、地方で決められることが少ない、という点も理由にあるでしょう。地方が行うことは議会の議決を得た条例や予算によって決められますが、その前に国が定めた法律や税制があるので、何でもできるわけではありません。「法律が認めていない」「お金がない」状況では、「やりたくてもできない」「できることが少ない」ため、決める立場でもやりがいがなくなってしまうと思います。

本書で紹介されている内容は、きわめて多岐にわたります。中には「こんなことを聞いて怒られないだろうか」という内容の設問もあります(実際クレームもあったようです)。ですが、おそらく国民の多くが学生の意識と同じように議員への不信感を持っているか漠然としたイメージにとどまっているのでしょう。地方議員は、そのことを真摯に受け止めつつ、アンケートを機に議員としての本音を発信しようとしたのではないかと思います。

地方公務員もまた、議員とのコミュニケーションの機会が多くあります。議員の本音を知っておくことで、行政と議会の健全な関係強化につながると思いますので、ぜひ読んでほしい本です。

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