火曜コラム「オススメ書籍」第51回:特別区職員研修所編『2021特別区職員ハンドブック』ぎょうせい
索引を含めると700ページを超える大変分厚い本ですが、価格は安く内容も非常に充実しています。この本は特別区職員の仕事のために書かれた本ですが、特別区を目指す学生の勉強ツールとしても大変有益だと思います。今回はその理由を3つ述べたいと思います。
第1に、内容が多岐にわたり、政策や制度の概要や形が大変詳しく説明されているからです。特別区が行っている行政分野として安・全安心の分野や少子・高齢社会への対応、健康・福祉や産業・経済などの分野にわたって、網羅的に述べられています。これらの記述で全体の3分の1に及ぶボリュームです。さらに、最新の動向まで詳しく紹介されているので、時事問題対策としても使えると思います。
第2に、特別区という特殊な地方公共団体の仕組みやこれまでの経緯が、やはり大変詳しく述べられていることです。東京都や特別区の誕生から自治権の拡充、区長公選制の復活をめぐる運動といった、これまでの重要なトピックだけでなく、地方創生や児童相談所の移管など最新の動向、これからの展望についても述べられています。また、特別区という存在は大阪都構想にも関係してくるため、東京都だけの課題ではなく日本の大都市制度のあり方にも影響してくるかもしれません。
第3に、特別区の職員に求められる仕事の進め方や勤務条件、財務や文書の仕組みなど、実際の仕事現場に即した内容が詳しく紹介されていることです。本書は特別区職員向けの本なので、仕事に役立てる内容であることは言うまでもないのですが、これは特別区職員になりたい学生にとっても、特別区の仕事がどういったものかを具体的にイメージすることができます。また、小論文や面接等では政策や仕事のあるべき姿について問われることも多いので、この本はそのヒントや答えになるものが満載と言っても過言ではありません。職員向けの本に書かれていることは、正解しかないと言えるでしょう。
このように本書は特別区の職員を目指す学生にとっても大変有益な本として、強くオススメしたいと思います。
最後に、「巻頭論文」と「23区の姿」についてもご紹介します。巻頭論文の著者は、地方自治に多大なる貢献をされてきた大森彌・東京大学名誉教授によるものです。今年は「新型コロナ禍と特別区政」というタイトルで、大変勉強になるだけでなく著者の熱い気持ち伝わってくる力強い内容になっています。また、「23区の姿」は特別区のそれぞれの特徴や主要課題が見開き2ページにわたってコンパクトに整理されています。特別区といってもさまざまな特徴があるので、職員を目指す方にはどの区が自分に合っているか、仕事にやりがいを感じるかを考えていただきたいと思います。