土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」を投稿しました!

 このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイートをご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください。

 今週ピックアップするのは、次のニュースです。

 官房長官「私的な意見を述べた」 財務次官の「バラマキ合戦」寄稿

 これに関して、私は次のようにコメントしました。

 官僚は政治家(上司)の指示に従う義務がある。心に秘めること、上司に進言することは良いかもしれないが、メディアで批判するのは官僚として好ましくない。

 この文藝春秋の論文が、これほど世間に注目されるとは本人も思っていなかったのかもしれません。官僚が論文や寄稿という形で情報発信をすることは、決して少なくないからです。
 私自身も、現役公務員の時代に自分の仕事に関して情報発信をすることはありました。仕事に関連する研究を行ない、論文を発表してきました。自治体職員が自ら研究活動を学会で行い、成果を発信する機会もあります。もちろん、公務員という立場なので、所属する組織を代表して、組織の公式見解を述べるものではありません。論文の冒頭に「筆者の個人的見解である」ということを断ったうえで、自由に発信することは可能です。もちろん、その責任は書いた人が個人で負わなければなりません。
し かし、それにしても今回の論文は財務省の考え方に近いものであっても、国の方針には大きく反するものですし、むしろ国の政策を強烈に批判したものになっています。自由な発言が可能であるとはいえ、国の政策を支える国家公務員がここまでの批判を述べて良いものかどうかには疑問が残ります。

 国家公務員法98条には、次のような規定があります。
 第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

 上司の命令に忠実に従う義務は、国家公務員(地方公務員も同様)の重要な使命です。財務省の事務次官(論文の著者)は財務省の職員のトップに当たりますが、財務大臣という上司がいます。財務大臣は論文の掲載を了解していると報道されていたのですが、財務大臣の上司ともいえる総理大臣は論文に批判的な立場をとっているようです。上司の意思に反するような論文は、さすがに個人的見解であったとしても、組織全体に大きな影響を与えるため慎重になる必要があると思います。

※ただし逆のこともあり得るでしょう。財務省の職員全体がこの論文のような認識を持っているとすれば、職員のトップである事務次官が論文を発表することで、財務省として一矢報いる形になって職員が爽快さを覚える可能性もあると考えられます。

 私の公務員時代の研究活動は、ここまで波紋を呼ぶようなことは控えてきました。どちらかといえば自治体が進めようとしていることを、より良い形で、より効果的に進めるために、自分で研究して見解を発表する、という形をとってきました。したがって自治体にとってもプラスの内容になり、ウィンウィンの関係になっていたと思います。もちろんそうした研究はインパクトに欠けてしまうので注目度は低いのですが、実務に携わる身としては研究がもたらすインパクトよりも研究したことを実行に移す方を重視していたので、それで良かったと思っています(自分が担当している業務は自分がやれば良いわけです)。

 もちろん私も仕事をしていて「これは違うのではないか」と感じたこともあります。しかし、その場合は組織の中でしっかり話し合いました。公務員としての使命感を持ち、批判的な意見も辞さない態度はきわめて重要だと思います。今回はの論文はおそらくそうしたことも組織内部で行ったうえで国民に発信したものだと思いますが、やはり政界の反応を見ていると大きな波紋を呼んでしまったので、本当に良かったのかどうか疑問を感じざるを得ません。また、論文がもたらした波紋の大きさを考えると、その穴埋めを著者が個人で行うだけでなく組織全体で行わなければならないかもしれません(財務大臣が了解していたのなら、なおさらでしょう)。著者の使命感も相当に高いものと思いますが、今回のような発信が果たして得策であったかどうか、どうしても疑問を感じてしまいます。

 明日、noteでは別の角度からこの問題を取りあげたいと思います。

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