土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」-住民投票を地域の意思決定にどう活用すれば良いのか?

 このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイート(リンク)をご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、公務員試験の小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください。

 今週ピックアップするのは、次のニュースです。

 IRの行方は、揺れる和歌山 住民投票求める署名、1カ月で2万筆

 これに関して、私は次のようにコメントしました。

 横浜市の例もあるだけに、署名に対する議会の判断が注目される。結果だけでなく、十分な議論の上で判断したかどうかも重要。

 先日行われた横浜市長選挙では、統合型リゾート(IR)の誘致が大きな争点となりました。前市長は誘致に前向きな姿勢を徐々に見せ始め、市民への説明も誘致の必要性を強調するものであったと言われています。そうした前市長への前のめりな姿勢に対する批判が、統合型リゾートに反対する新市長の誕生につながったと感じます(ただ、IR以外の政策に新市長への期待がどこまであるのかは、不透明です)。
 こうした横浜市の動向を横目に見ながら、和歌山県でも統合型リゾートをめぐる住民投票の直接請求が行われることになりました。この請求が認められれば、議会に対して住民投票条例の提案が行われます。ここから先は通常の議会での審議と同じで、審議の結果、可決されれば条例が成立しますし、否決されれば条例は成立しません。

 自治体が重要な決断を迫られる場合は、議会の判断が最も重要です。しかし、そこに住民の意向が必ずしも反映されていない場合、このような形で住民投票の請求が行われるケースがあります。しかし、「自治体の意思決定は議会制民主主義に基づき行われるものであるのが大原則である」との理由から、こうした条例制定の請求は議会で否決されることがほとんどです。
 もちろん住民は、こうした議会の動向も見ています。そこで、否決された場合でも次の議会議員の選挙では住民の意思に沿った議員が選ばれるよう、候補者を擁立して選挙活動が行われることになります。今回の和歌山市のケースでは、議会の議決はこれから先ですが、どのような結果になるのか、また今後の展開がどうなるのかが注目されるところです。
 個人的には、「住民投票が住民の意思を直接反映するので、議会制民主主義よりも尊重されるべきである」とは必ずしも考えていません。もちろん住民の意思は大変重要です。だからこそ、議会制民主主義は住民の選挙が前提になっています。しかし、住民投票の基本的なスタイルは「YESかNOか」の二者択一です。もちろんどちらか一方を選ぶ方が結論も明確なことは間違いないと思いますが、私たちがさまざまな決断をするときに、それほど明確に、極端に「YESかNOか」の答えを出せるわけではないと思います。現実的には、「どちらかと言えば」とか「強いて言うなら」といった枕詞を付けて、最終的には限られた選択肢の中から選ばざるをえない、といった形になるでしょう。住民投票もどちらかを選ぶと言う意味では明確で良いのですが、その分人々のアンビバレントな本音を的確に反映できないと言う問題があると思います。

 「では選択肢を10段階にすれば良いではないか」と言う意見も出てくるでしょう。確かにそれも1つの方法かもしれません。しかし、今度は逆に答えが明確にならないと言う問題点が出てきます。住民投票の結果、住民の意思が明確に示すことができないのであれば、それをどう議会やトップの意思決定に反映するできるのか、そのプロセスに恣意的な判断が生じる余地が大きくなります。
 このように、住民投票は選択肢の問題が非常に大きいと感じています。これだけの理由で住民投票に懐疑的と言うわけではありませんが、住民の意思を直接反映する住民投票を行うには慎重な判断が必要だということを述べておきたいと思います。

 私がもっと重要だと思うのは、議会や住民の判断の結果だけでなく、そのプロセスです。「YESかNOか」の判断が難しい場合だからこそ、正確かつ十分な情報に基づき、さまざまな議論を交わし、それぞれの立場の根拠とメリット・デメリットも含めて明確にしておく必要があります。最も恐ろしいのは、十分な情報がなくそれぞれの立場に対するへ不安と不信が渦巻く中で、住民投票や議会の判断へとなだれ込むことです。どれだけ慎重に判断しても間違えるはあるかもしれませんが、そうした状況で行われた判断が正しいとは、誰も考えないのではないでしょうか。しかし、それでも出た結果は、住民の意思ということで尊重しなければならないのです。そうなってしまうことが恐ろしいと考えます。

 それぞれの立場に立つ側は、自らを有利に見せるため情報を選別・誇張するかもしれません。いずれの側にもそういったことが起こる可能性があります。住民投票は(選挙も)勝たなければ意味がないのは確かにその通りですが、そのために誤った判断を導き地域を不幸に陥れるようなことがあっては本末転倒と言えるでしょう。重要なのは、議会や住民の判断の結果だけでなくプロセス、つまりいずれの側も十分な情報と議論によって生まれたものかどうかなのです。判断の結果がどうあれ、その背景に何があるのかが分かれば、住民の意思がより明確になると思います。

 住民投票へのプロセスが適切であったかどうかを客観的かつ公平に検証するためには、いずれの立場にも立たない中立的な存在が必要だと思います。選挙でも、立候補者の討論会が中立的に行われていますが、こうした討論の場を用意したり、住民を説得する過程を十分にチェックできる存在が重要なカギを握るでしょう。そうした存在を見いだすことは決して容易ではありませんが、地域を左右するほどの重要なテーマがこれからさらに多くの地域で出てくるとすれば、こうした存在をどのように育てていくかが各地で問われてくると思います。

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