土曜日企画「ここで差がつく!地方公務員をめざす学生が知っておきたい最新ニュース」-統計業務を適切に行うためには、統計を使う側も意識を変える必要がある

 このコーナーでは、毎週ツイート・コメントしている最新ニュースの中から1つだけピックアップして、より詳しく解説、意見を述べたいと思います。ツイート(リンク)をご覧いただくとともに、最新ニュースを知り、公務員試験の小論文や面接で自分の意見を述べるためのヒントとして、活用してください(今回は日曜日に更新しました)。

 今週ピックアップするのは、次のニュースです。

 統計業務は人員不足 「気の毒な環境」で対応鈍く

 これに関して、私は次のようにコメントしました。

 客観的な政策形成に正確な統計は必須。万全の体制作りは当然なのだが、そこに手を入れざれを得ないほど公務員の削減が迫られている、ということではないか。

 統計業務については、国だけでなく都道府県でも市町村でも担当部署があります。ただ、都道府県や市町村の場合は国が行う統計業務を決められた方法に基づいて正しく実施することが、主な仕事になります。国のやり方を外れて勝手なことを行えば統計が不正確になってしまうので、マニュアルどおりに行うことが求められます。
 今回のニュースは、まさに国が仕事のやり方を勝手に変えてしまったことで起きました。都道府県や市町村は国から言われたことを言われたとおりに進めるだけなので、いずれにしても統計が不正確になってしまうのは同じです。
 こうした仕事はまさにルールに基づいて行う公務員の典型的なものと言えますが、決められたことを決められたとおりに行うのは、大変な割にやりがいは少ないのかもしれません。自分で創意工夫できる余地が小さいからです。

 しかも、統計が他の分野と比べてどこまで重視されているかと言えば、やや心もとないと言わざるを得ません。直接的に国民の生活や経済を支えている分野ではないからです。統計は客観的な分析に基づく政策形成(EBPM)をするために欠かすことはできません。したがって、統計は使うことが重視されてつつありますが、作ることに関しては「出来て当たり前」のような認識をされているのではないでしょうか。

 このように、統計の仕事は公務員の典型的な仕事でありながら、その重要性があまり理解されておらず、人員削減と負担の増加が続いています。もちろん、他の業務も同様なのですが、重要性への理解が不十分ならば優先的に削減されてしまいます。それが仕事の歪みを生み出し、今回の問題が生まれたと言えます。

 私も経済の分野で大学に勤務していることから、データを使うことはたくさんあります。しかし、そのデータがどのような職員のどのような苦労に基づいてできているのか意識することはほとんどありません。もちろん公務員の時代には統計に関わったことがあるので、作る側の苦労も知っています。厳しいルールに従わなければならない、ミスが許されないというプレッシャーに押し潰されて涙したこともありますし、住民や事業所の方々に趣旨を理解してもらい、正確に回答していただくのは本当に大変です。「個人情報や企業秘密を晒したくない」「協力しても何のメリットもない」、そう言われる中で、とにかく「お願いします」と言うしかない、というのが偽らざる実態だと思います。

 これは統計という仕事の本質に関わるものなので、そうした状況から脱却することは困難だと思います。しかし、だからといって今のような統計の状況で良いのかといえば、決してそんなことはありません。では、どのようにすれば良いのか、カギは統計を使う側にあると思います。統計を使って適切な政策を形成し、政策の重要性や効果を国民や住民にしっかり説明することに尽きると思います。経験やカン、思いつきは職人芸として大切ですが、最終的には統計に基づいて確認する必要があります。そうしたプロセスはあまり面に出ていないように思うので、使う側が統計を適切に使うことが、統計に関わる仕事の重要性を再認識するキッカケになると思います。

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