連載企画:誰でも無理なく合格できる!公務員試験の勉強術(第12回):「試験のための勉強」から「仕事のための勉強」へ

 公務員試験のスケジュールも本番のピークを迎え、受験生の皆さんは大きな緊張感のある日々を過ごしていることと思います。この試験ピークを乗り越えれば、ようやく一段落することになりますので、そこまでの辛抱で、とにかく乗り切っていただきたいと思っています。また、試験に合格した方は晴れて公務員への道を獲得し、ほっとしていることと思います。今から大学を卒業するまでの間に、試験で勉強のためにできなかった旅行やレジャーなど様々なことを体験し、残りの大学生活を思い出深い充実したものにしていただきたいと思います。

 さて、こうした時期には、長い間勉強を共にしてきた参考書や問題集ともお別れ、と言うことになるかもしれません。公務員試験は科目数が多いので、書棚のスペースを多く使っていた参考書や問題集を処分すれば、さぞかし部屋もスッキリすることでしょう。就職を機に地元へUターンする人にとっては、もう使わないものとして真っ先に処分するものとなるかもしれません。

 しかし、私はこうした参考書や問題集は公務員になってからもできるだけ手元に置いていただきたい、と思っています。なぜならば、仕事には直接使うことはないとは言え、公務員試験で学んだことには、その後の仕事を背後で支えている重要な知識が詰まっているからです。それを持ち続けているか、持ち続けていないかで、公務員としての仕事の豊かさに大きな違いが出てくるのではないか、と思います。

 大学受験では試験に合格した後の大学での勉強は高校までと大きく違うので、高校までの勉強は大学以降使うことはほとんどありません。そのため、大学受験に使った参考書や問題集は使わなくなり、処分しても大きな問題はないと思います。しかし、高校生の時に学んだ日本史や世界史の教科書が社会人向けに刊行されベストセラーになったように、こうした知識であっても、社会に出て有益なものになることも多いのです。私も歴史の勉強が高校時代に得意ではなかったので、今、教科書を購入して勉強しています(池袋の三省堂書店に教科書が売っています。かつては神保町の三省堂に教科書コーナーがありましたが、現在工事中のため池袋店で扱っているようです)。

 公務員試験の場合はなおさらだと思います。例えば、弁護士や公認会計士になるために試験対策として学んだことは、合格後の仕事に直接使うものばかりでしょう。つまり、大学受験で勉強することとは大きく異なるわけです。公務員試験も、本来は弁護士や会計士の試験のように仕事に使うための試験でなければならないと思います。特に法律関係はそれに該当するかもしれませんが、経済学や学説史ついては、そのような認識がなされず、合格後はすっかり忘れてしまうことが多いでしょう。

 しかし、これからの公務員は、そうした知識こそ仕事に役立ってくることになると確信しています。例えば、地方創生では、人口減少を食い止めるためにさまざまな支援策を行っていますが、それがどのような効果を上げているのか、そしてどのような財政負担をもたらしているかは、経済学や財政学の知識を使わなければ正確に知ることができません。公務員試験の合格のために勉強したことは、公務員になった後の仕事のための勉強としても続けていく必要があると思います。

 もちろん仕事のための勉強は「問題を解く」というものではありませんので、公務員試験とまったく同じことをするものではないと思います。しかし、試験問題は知識の確認のために非常に有益です。合格のプレッシャーはなくても、勉強の成果を把握して自信を深めるためには、問題を解くという作業は引き続き大切だと思います。

 もちろん、公務員試験の勉強は、大変な努力を重ねてた結果だと思いますので、自分の貴重な体験として、その証を手元に残していくこともまた、自分の成長の記録としても有益だと思います。

 公務員試験を終えて参考書や問題集を処分しようと思っていた皆さんは、ぜひこの記事を読んで、少し思いとどまっていただきたいと思います。

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