公務員の仕事:長期的視点を持つ方法-定年イメージのススメ

 昨日の投稿では、長期的視点を持つことの難しさについて述べた。特に最近は、公務員の仕事も忙しくなってきており、目の前の仕事をひたすら片付ける日々の職員も多いのではないだろうか。いったん立ち止まってゆっくり考える時間も必要なのだが、職員数が減り仕事が増えていくなかでは、むしろ考える時間を削らなければならない状況になっている。私は公務員を退職して4月で13年になるが、同僚や先輩から「昔よりもかなり忙しくなった」という話をよく聞く。

 とはいえ、昨日の投稿で述べたように、長期的視点の重要性も高まっている。そこで、私なりに考えた方法として「定年イメージのススメ」について述べることにしたい。

 ごく簡単に言えば、「自分が定年を迎えるときにどんな国・地域であってほしいか」を、あらかじめイメージしておくことである。公務員になりたい人は、およそ40年以上にわたる自分の足跡として何を残したいのか、ということを考えてほしい。このイメージは、公務員試験の勉強に対するモチベーションにもなるし、試験の面接の際には志望動機としても使える。もちろん公務員としてすでに働いている人の多くも、定年を迎えた時のことを考えてほしい。これまでの、そしてこれからの公務員としての自分の仕事に大きな価値をもたらすであろう。

 例えば、技術系の職員は自分が設計や整備に関わった道路や公共施設が、目に見える成果として残る。体育館に多くの人が集い、運動している姿を見ると、自分が設計や整備に関わったことに誇りを感じる。私は事務系の職員だったのでこうした経験はなかったが、総合計画(最上位の自治体計画で、5〜10年間でどのような政策を行いどのような地域をめざすのかが記載される)の原案作成を行った。計画が冊子になり全部署に配分された時、自分が関わったことに大きな誇りを感じた。

 公務員の仕事の成果は、目に見えるものばかりではない。むしろ国民・住民の日常生活が普通に送られていることの中に、多くの公務員の仕事が隠れている。そのうち、自分の仕事がどのくらい役立っているかはますます見えない。目の前の仕事に追われる日々でも、提供されたサービスは確実に国民・住民に伝わっているのである。

 公務員の仕事が全体として国民・住民の役に立っていることは何となく理解できても、「そのうち自分の仕事がどこに役立っているのか」と苦悩している公務員は意外に多い。そこで、いま向きあっている仕事のイメージよりも、定年を迎える時の国・地域のイメージを持っておくと良いだろう。

 40年後のことは、誰にも分からない。10年後のことさえも分からないだろう。しかし、分からないからこそ、自分の力で変化を起こせる部分もあると思う。例えば、寺社仏閣などの観光客で賑わっていた地域がIT産業の先端地域として発展しているかもしれない。あるいは、人口減少に直面している地域が若者の殺到する地域に変わっているかもしれない。自分が定年を迎える際にどういった地域になって欲しいか、そのために自分に何ができるのかを今からイメージしておけば、たとえ普段の仕事に追われていても、自分のイメージに仕事を落とし込むことで長期的視点を持たせることができるのではないだろうか。そして、自分がイメージしていたものが定年を迎えた時に少しでも現実になっていれば、自分の仕事が役に立ったと思えるだろう。

 もちろん公務員は異動を繰り返すから、実際に従事する仕事が自分のイメージとあまり関係しない場合もあるかもしれない。しかし、そうした状況でも関連を考えることで仕事の見方に幅が広がり、新たな発見を得ることで自分のイメージもより洗練されたものにすることができる。また、関係の強い部署に異動するまでの猶予期間とすることもできるだろう。

 これほど長期の時間軸で仕事を捉えることは、若手職員の特権でもある。公務員を目指す方には、ぜひとも「自分が定年を迎えるときにどんな国・地域であってほしいか」をあらかじめイメージしておくことで長期的視点を持つとともに、長く続く公務員の仕事にモチベーションを持ち続けてほしい。

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