土曜コラム「今週のニュース」第7回:大都市と地方、どちらを重視?
今週もいろいろなニュースにコメントした。今日取りあげたいニュースは、次である。
《独自》日本版シリコンバレーへ 政府が東京・横浜など4都市圏を選定
このニュースに関して、私は次のようにコメントした。
三大都市圏+福岡が今後の成長を牽引する都市であることは間違いない。
やや突き放したようなコメントとなってしまったが、その時の素直な印象をツイートしただけである。ここで、少し詳しくその思いを述べることにしたい。
大都市重視か、地方重視か、人によって違いがあるだろう。私は大都市と地方で人生の半分ずつを過ごしてきた。そのため、大都市も地方もそれぞれ重要だと思っている。しかし、両者にはどうしてもトレードオフの関係がある。大都市を重視すると地方が疎かになるし、地方を重視すると大都市が疎かになる。両立は大変難しく、一方の政策を優先すれば他方の政策が後回しになってしまうのである。
国の政策を見ていると、大都市を重視した政策と地方を重視した政策の両方がある。他にも前者に含まれるのはIR構想などである。後者の代表は地方創生であろう。
ここで取りあげたニュースは前者に属する。つまり、大都市重視である。大都市の成長は、日本の成長をけん引する。したがって、日本が成長を持続していくためには大都市の成長は欠かせないだろう。そうした意味で、上記のようなコメントをしたのである。
しかし、地方の成長にはタイムラグがあり、大都市に遅れがちとなる。そのため、成長とともに地域間格差が拡大し、地方創生のような地方重視の政策が要請される。とはいえ、端的に言えば「大都市の成長なくして地方の成長なし」という状況であり、地方の成長は大都市の成長とともに生じることは変わらない。「トリクルダウン」という言葉があるように、成長の果実が大都市であふれて、地方に滴り落ちるのである。そして、地方が成長を享受する頃には景気循環等によってすでに成長が鈍化し、地方も間もなく停滞を迎えることもある。
もちろん地方は自ら成長することを望んでいるが、それ以上に格差の是正を望んでいるはずである。だとすれば、「大都市の成長なくして地方の成長なし」という状況では真の地方重視は永遠に望めないことになってしまう。
かつて、大都市と地方の間の人の動きは、経済情勢と密接に関係していた。つまり、高度経済成長期には大量の若者が地方から三大都市圏(東京・名古屋・関西)に移動し、オイルショックで収束した。その後、バブル期に再び(地方から東京への)移動が活発になり、バブル崩壊で再び収束した。さらに、2000年代以降は緩やかな成長が長く続く時代を迎え、三度目の移動が起きている。若者の移動は、大都市の成長に惹かれるかどうかによる、とも言えるのである。
こうした状況を転換し、真の地方重視を実現するには、地方が成長をけん引する構造としなければならないだろう。だが、それは容易なことではない。だからこそ、成長を実現するために大都市重視の政策がことあるごとに顔を出し、そのたびに政府が打ち出した地方重視の姿勢は嘘だったのか、という疑念を抱いてしまうのである。