土曜コラム「今週のニュース」第11回:公務員の年功序列を抜本的に見直すべき?

 今週も多くの記事をとりあげてコメントしたが、今回は次の記事について掘り下げてみることにしたい。

 国家公務員はモチベーションを保ちづらい? 若手男性官僚の7人に1人が「数年以内に辞職したい」と回答する背景

 このニュースに関して、私は以下のようにコメントした。

 活力に満ち溢れる若い時期に活躍できる環境にないのは、仕事としての魅力に大きなマイナスになる。

 若手公務員が辞職を考える理由として、30歳未満男性の最多は「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたいから」だという。なお、30歳未満女性の場合は「長時間労働などで仕事と家庭の両立が難しいから」が最も多いという。ここでは、男性に焦点を当てて話を進めたい。若い男性公務員が「もっと自己成長できる魅力的な仕事につけない」と感じるのは、突き詰めれば年功序列の問題なのではないか。

 私は、所属する大学で公務員を志望する学生に話を聞く機会が多い。彼らが公務員という仕事に強い魅力を抱いているのは言うまでもない。しかし、そうした学生とコミュニケーションを取って感じているのだが、彼らが公務員という仕事に対して最も嫌っているのが「年功序列」なのである。

 
 新卒で公務員になったばかりの若手職員が、いきなり幹部になることはもちろんない。多くの場合、最も低い役職から始まって年数の経過とともに昇進していくのだが、公務員の年功序列には特徴がある。まず、公務員の種類によって多様だが、キャリア前半の時期(40代半ばごろまで?)に昇進で差がほとんどつかないことである。若いうちから差がついてしまうと後れを取った職員のモチベーションが低下してしまうので、同期・同世代の職員で切磋琢磨を続けることが目的とも言われている。そのため、もう1つの特徴として、差がつき始めるのは40歳台後半くらいからということがある。なぜならば、ポストが少なくなってくるのと、重要なポストに能力の高い職員を配置するために、ある程度の差がつくのである。

 したがって、公務員の年功序列には2つの面がある。第1に、若いうちは年齢を理由に下の役職に止まらなければならないことである。若手でも能力の高い職員は多いが、あまり差を付けない仕組みのために彼らが高い役職には就けない。そのため、せっかくの能力が生かされないのである。もし加齢とともに能力が低下しまうならば、役所にとっても本人にとっても損失となるだろう。もちろん、そうした職員は「将来の幹部候補」とみなされ、低い役職であっても将来のために仕事に励み続けてきた。しかし、仮に自分より能力の低い上司の下で働くことになれば、不満も大きくなるだろう。そうした状況を、学生は強く不満に思っているのではないか。

 第2に、40歳台後半くらいに差がついてきた場合でも、能力が同じならば年齢の高い職員が先に昇進することも、年功序列の1つである。年齢が高ければ退職も早いのだから、先輩に譲っても良いのかもしれないが、自分の能力が活かされないことは第1の点と変わらない。

 最近は、学生の大企業志向とともに起業など、すぐに活躍できる環境を求めるケースも増えてきた。自分の時代にはそうした風潮がなかったが、気力・体力・能力ともに充実している時期に活躍したい学生が多いのは素晴らしいことだ。高齢職員は、経験こそ若手を上回っているかもしれないが、変化の速いこの時代に経験がかえって邪魔をすることも多くなっているだろう。

 こうした状況のなかで、依然として年功序列がベースとなっている公務員は、若い人から敬遠される要素になってくる。それ以外の魅力があるから公務員をめざして晴れて公務員になっても、早いうちに辞めたいと思うようになることは、敬遠される要素の方が実は大きいことを働きながら実感したのかもしれない。その根源が年功序列にあるのだとすれば、能力ある有望な人ほど辞めたいと思っているのかもしれず、問題はさらに深刻である。

 どこかで年功序列の抜本的見直しが必要になるかもしれない。

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