土曜コラム「今週のニュース」第18回:公務員の処遇はコロナの影響を受けない?

今週も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

NY市、9,000人の職員を無給休職へ。新型コロナで財政難

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

アメリカ的な方法にも見えるが、日本でも財政難になれば人件費カットなどは起こりうる。「公務員は新型コロナでも収入減らない」とは言い切れない。

新型コロナの蔓延が広がり、緊急事態宣言が発出されて国民1人当たり10万円の給付金が決定された時期は、公務員には「公務員は新型コロナで収入が減らないのだから受け取るべきではない」などと言われ、また、「住民のために公務員は給付金を寄付するべき」という動きも見られました。一方で、新型コロナへの対応で医療現場や窓口業務が パンク寸前の状況になっていることで、「一生懸命働いている公務員に感謝すべき」とか「公務員をもっと増やして労働環境を改善すべき」といった意見が見られました。このように、相反するような両極端の見方が公務員に向けられる中で、一体どちらが正しい姿なのか考えていました。

今はそのような状況はやや落ち着いていたように見えますが、公務員の給料はこれから下がってきます。まず、秋からの給料が削減され、冬のボーナスも減ることになるでしょう。公務員の給料水準は、国の場合は人事院勧告で、地方の場合は人事委員会の勧告その他で決まります。公務員は労働基本権に制約があるため、人事院のような機関が民間企業の給料水準とバランスさせるため、あるべき給料水準を政府に勧告する形になっています。見直しは1年に1回で、秋にその内容が示されます。

人事院は民間企業の給料水準を調査します。すでに民間企業の給料やボーナスが下がっているという報道が見られるので、それに合わせて勧告も公務員の給料水準を下げることになるでしょう。したがって、公務員は給料が下がらないことはありません。基本的には民間企業と歩調を揃えます。

ただ、今回のコロナからも分かるように、民間企業の場合は業種によって給料水準が大きく下がるところもあればそうでないところもあります。しかし、公務員の場合はさまざまな業種の平均的水準とバランスをとるようにするので、そこまで大きく下がることはありません。逆に言えば、景気が良い時は民間企業も業種によって給料水準が大きく上がるところもあればそうでないところもありますが、公務員の場合はやはり大きく上がることはありません。民間企業に合わせて変動はしますが、上がる時も下がる時もその幅はそれほど大きくない、というのが実態だと思います。

また、今週のニュースで紹介したニューヨークの事例は公務員の休職という記事ですが、日本の公務員試験でもそういったことが絶対にないとは限りません。「公務員は身分保障があるからクビにならない」と言われていて、それが公務員人気の要因でもありますが、法律上は決してそうではないのです。 

国家公務員法第78条4には、「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」に、本人の意思に反して降任や免職ができることになっています。さすがに最近そのようなことはありませんが、新型コロナのような予期しない事態が発生するなかでは絶対にありえないとは言い切れません。

こうしたことから、取り上げた記事のような事態はニューヨークだけのことと片付けられないところです(もちろん公務員の不安をあおるつもりではありません)。

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