金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第11回:新結合によるアイディアのイノベーション

 文章でもプレゼンテーションでも、斬新で印象的な内容の方が、読者や聴衆の関心を引き寄せることができます。そのためには、チームでブレインストーミングを行うなどの方法が提唱されていますが、つまるところ、それは「組み合わせ」だと思います。

 まったく新しいアイデアをうち出すことは、決して容易なことではありません。出せたとしても、せいぜいのところ、これまでの改良版くらいだと思います。しかし、発想を変えてまったく別の要素を組み合わせると、これまでにない新たな提案につながる可能性があります。

 このことは、人間自身の発信力を高めるための考え方にも通じています。私の場合、「元地方公務員」 というだけでは発信力はまったくありません。しかし、「元地方公務員で、現在は大学教員」となると珍しい存在ですから、発信力も大いに高まります。さらに、これに加えて「原子力発電所が立地する地域で20年以上暮らしていた」「立地地域で財政を経験し、地域の視点から制度を捉えていた」となれば、唯一と言っても良いくらいの存在です。最近では、関連するニュースの取材等を受ける機会も増えてきましたが、これらの要素が新結合として重なり合って自分の発信力につながった結果だと思います。

 文章やプレゼンテーションでも、ユニークな政策を組み合わせることによってそのユニーク性が一気に向上するだけでなく、複数の課題解決につながることも期待できます。

 「ブレインストーミングでは、どんな意見も否定してはいけない」とよく言われますが、 それは一見すると無関係なアイデアが、実は組み合わせることによって大きな価値を持つからではないかと思います。文章は1人で書くことも多いですが、頭の中でブレインストーミングをして、そのうえで新しく結合させる力を養うと、より斬新で印象的な内容に仕上がるのではないかと思います。

 「新結合」によるイノベーションという考え方を提示したのは、経済学者のシュンペーターです。イノベーションは、資本主義の前進に大きな役割を果たすと唱えています。まさに文章やプレゼンテーションでも、新結合によって内容のイノベーションがもたらされるのではないかと考えます。

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