水曜コラム「公務員の学び」第27回:他の取り組みに学ぶ
さまざまな政策を考える際、他の国や地域で類似の取り組みを行っていることから学ぶことは、たくさんあります。人口と税収が同時に縮小していくなかで、新たに進める政策が着実な成果をあげるには、具体的な事例が大いに参考していかなければなりません。大成功をおさめている事例があれば、同じような取り組みによって同様の成功に至る可能性が期待できます。円滑な意思決定と確実な成果のために、事例は欠かせないでしょう。
ただし、注意すべき点が3つあります。
第1に、他の成功例がそのまま自らに当てはまるとは限らない、ということです。言うまでもありませんが、成功の理由にはいろいろあって、時期や地域特有の事情も関わってきます。したがって、同じことを別の時期に別の国や地域で行っても同じような成功をおさめるとは限りません。
第2に、失敗例にも注目した方が良い、ということです。成功例ばかりに目が行きがちですが、失敗例にも学ぶべきことはあります。「こうすれば(しなければ)成功したのではないか?」などと考えることによって、成功のヒントが見えてくることも多いと思います。「失敗」と書いて「せいちょう」と読む、とも言われるように、失敗が責められるべきは、それを次に生かせない時です。誰かの失敗でも自らの教訓として、成功を導きたいものです。
第3に、成果は持続的でなければならない、ということです。成功をおさめた事例は注目され、追随する事例も多く出てきます。もちろん、その中にはやはり成功するものも出るでしょうから、ブームが生じることもあります。しかし、一時的なものにとどまってしまうものも多いはずです。それらはブームが去った後、もはや注目を集めることなくひっそりと姿を消し、人々の記憶からも遠ざかってくるでしょう。その時は、別のブームに心を奪われ、それに踊らされてしまうのです。こうしたことの繰り返しで、現状があることを理解しておきたいと思います。
このように、他の国や地域の成功例に学ぶことは大いにありますが、安易なモノマネは禁物です。広い視野で、長期の時間軸で、冷静に事例を捉えることが、成功例から学ぶうえで大変重要だと思います。