土曜コラム「今週のニュース」第27回:「住みたい街ランキング」の見方
今週も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
そこに実際に住んでいる人が選ぶ可能性は低いとすれば、どんな人々の嗜好が反映されているのかを知りたい。
ランキング形式のニュースについて、このブログで何度も取り上げてきました。結果に一喜一憂しないこと、内容を重視すべきことなどを述べてきました。しかし、今回の投稿では、別の角度から述べていきたいと思います。
今回のランキングに関しては、調査方法に注目します。以下のとおり行われたようです。
全国47都道府県1856自治体に住む20歳以上の男女を対象にインターネットで実施し、18万7823人が回答。現在住んでいる都道府県や都市圏とは異なる地域を住みたい街として挙げた1万4234人の回答の得票数をランキング形式にした。
ここで気になるのは、全国47都道府県の人々が、現在住んでいない地域を対象に調査したもの、ということです。私たちは、全国の市町村を詳しく知っているわけではありません。存在すら知られていない市町村の方が多いかもしれません。そうした状態で市町村を選べば、知っているごく一部しか選択の対象になりませんし、どうしても知っている範囲で、そして持っているイメージで答えるしかないと思います。
その結果、福岡市・横浜市・那覇市という順位になったのも、それぞれ個性あるイメージが確立されているからだと思います。その個性の中で、どのような点が選択されたのか、知りたいところです。
また、今回のランキングは「住みたいまち」で、対象は地域外です。したがって、選ぶ人にとっては現実味がないものになっています。私たちが住む場所を探す時には、もちろん希望はあるでしょうが家賃や物件価格の水準と利便性などを総合的に考慮します。本当はここに住みたいけれど、高くて無理、というケースも多いでしょう。現実問題として住むことを想定していないと、実際の人々の行動につながるランキングにはならないように思います。
もちろん、ランキングにまったく意味がない、というわけではありません。人々の行動には憧れやイメージから入ることは多くあるので、「もう少し収入が増えたら住みたい」という気持ちを持ち続けて、実現する可能性もあると思います。
こうしたランキングものは、必ずしも結果と現実がリンクしきれていないところがあるはやむを得ないのですが、このランキングもまた、「住みたい街」というよりも「いつか住めるならば住んでみたい街」と呼ぶ方が(ダラダラした名前になってしまいますが)、多少リンクができてくるのではないか、と思います。