土曜コラム「今週後半のニュース」第32回:トップが左右する公務員の人事
今週の後半(昨年末から今年初にかけて)も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
霞が関は「菅総理が怖い」 舛添氏「官房長官時代に気に入らないのは首を飛ばしている。おっしゃる通りだ」
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
公務員の幹部人事はトップの意向が反映される。どの機関にも、記事のような傾向は多かれ少なかれあるのではないか。
昨年の大ヒットドラマ「半沢直樹」でも「銀行員は人事がすべて」という言葉がありました。公務員だけでなく、特に大きな組織で働く人にとって、人事は最も重要と言っても良いと思います。「幹部職員として組織をコントロールする立場に立ちたい」「幹部として自分の追求してきた仕事を貫徹したい」という思いがあります。公務員の場合、若手の頃は所属する部署や地位で大きな違いはありません。職員同士で切磋琢磨をする期間となります。
しかし、年齢を重ねてくると差がついてきます。上位のポストは数が少ないので、昇進できる人とできない人が出てきてしまうのです。そして、上位のポストは必然的にトップに近い位置で仕事をすることになるので、トップとの関係がきわめて重要になります。
トップとしては、幹部職員は2つの選び方があるのではないでしょうか。1つは、トップの思いを組織に浸透させられる人材です。トップは政治家として選挙で選ばれるので、マニフェストなどで有権者に公約を示していますし、政治家として重視している分野があります。そうした公約や重視している分野については、どうしても実行したいという気持ちがあるので、トップの思いをくみ取って組織全体を動かせる人材が必要になるのです。
もう1つは、その分野の専門的職員として安心して任せられる人材です。トップとはいえ、優先順位の高くない分野でも指揮権を発動します。そうした分野の有能な職員は、トップに代わって手堅く政策を実行してくれる人材として重宝されるのではないかと思います。
「気に入らないのは首を飛ばしている」というのは、好き嫌いで選別しているような印象がありますが、幅広い分野に強い思いを持っている政治家は、特に前者の理由で幹部職員を選ぶことが多いのではないかと思います。それは、トップが責任をもって政策を実行するうえで重要なポイントなので、自分の思いを貫徹できない人材は遠ざけるのは当然のこととも言えます。
ただ、政策はいろいろな意見を踏まえて行うものです。あえて異を唱える職員を配置することもトップの懐や政策の深さをもたらすのではないかと思います。自分の思いに忠実な職員だけを近くに置く人事は、偏った組織になってしまう可能性もあるのではないでしょうか。
いずれにしても、ニュースだけでは実態が分かりませんが、ニュースの範囲で感じたことを述べてみた次第です