金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第18回:アナウンサーの話し方はプレゼンテーションに有利か?

 なんだか挑戦的なタイトルになってしまいましたが、ニュースを見ているとアナウンサーの話し方に感嘆します。「なんて分かりやすい言葉だろう」「なんて心地の良いトーンだろう」と感じますし、ニュースの内容で絶妙の喜怒哀楽を付けていることで、メリハリが生まれ、心に突き刺さります。

 アナウンサーの話し方で参考になるのは、1分間に300文字程度の速さ、ということです。速すぎると聞き取りにくくなるので、アナウンサーの速さを目安にすると良い、と言われます。ある程度シナリオを作ってプレゼンテーションに臨む時は、制限時間に合わせて文字数を設定すると良いでしょう。

 ただし、話し方ばかりに注目が集まってしまうと、どうしても小手先のテクニックになってしまいます。話す内容、映像のタイミング、テーマの切り替え、など、すべてが噛み合って伝わるのがニュース番組であり、アナウンサーの話し方は、その1つの要素です(もちろん大切な要素ですが…)。他の要素が伴わず話し方だけに磨きをかけても、決して良いプレゼンテーションにはなりません。

 個人的には、アナウンサーからプレゼンテーションで学ぶことは、別の点にあると思っています。そこで、他にもアナウンサーから学べることを紹介したいと思います。それは、全体把握力とアドリブ力です。

 全体把握力とは、時間の進行をしっかり管理しつつ番組として成り立つ内容を盛り込むことです。テレビやラジオは時間がはっきりしているので、早めに終えたり時間が足りなくなることは許されません。しっかりとしたシナリオがあっても、予定どおりに進むことはないと言っても良いと思います(たいてい進行は遅れがちです)。その時に、当初の内容をしっかり盛り込みつつ時間どおりに終えるのは、アナアンサーの仕事です。特に生放送の場合は、それが厳格に求められます。アナウンサーのさばき方は、全体を見渡して進行管理し、しっかり締めくくる全体管理力の高さを窺わせます。これを磨けば、プレゼンテーションの際にも有利に働くでしょう。

 次に、アドリブ力です。番組のシナリオはしっかりしていると言っても一言一句決められているわけではなく、概略程度の場合もあります。そのため、想定外の内容や事態(番組の途中に速報が入ったり地震が発生して注意を呼びかけたりするなど)が発生するのてすが、その時に慌てず冷静に、しかも機転の効いた内容を話せる力は、本当に感嘆します。しかも、アナウンサーの方々は、それを当たり前のように、楽しんでいるようにさえ見えます。これは日頃の訓練の賜物でしょうが、恐るべきアドリブ力です。

 プレゼンテーションでも、会場の雰囲気や突然のハプニング、あるいは質疑で想定外の質問が出てくるなど、とっさの対応が求められることが起こるでしょう(起こると思っておいた方が良いです)。その時に、その時に慌てず冷静に、しかも機転の効いた内容を話すことができれば、大きな印象アップに繋がると思います。

 いずれも訓練が必要な力ですが、そうした力を付けられる場に積極的に参画することをススメます(料理などは全体把握力の向上に大きく役立つと思います。学生時代のアルバイトとしても、良いと思います)。

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