金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第19回:対話型のストーリー構成には惹き込まれる
大学での講義や講演などは、基本的に1人の講師が大勢の学生や聴衆に話しかけるものです。プレゼンテーションの場合も基本的には同じです。もちろんグループで発表することはありますが、メンバーの役割は報告担当(前半・後半など)、スライド担当、質疑担当などに分けられることが多く、これは1人でプレゼンテーションできるものを分担する形です。したがって、プレゼンテーション(グループ含む)も講義や講演と同じように1人のプレゼンターが大勢の聴衆に話しかけるものと言えるでしょう。
このような場面では話す人が話したいことを一方的に話す形になり、受け手にとって関心のある話でなければ伝わらなくなってしまいます。そこで、講義では学生の参加を促すような仕掛け(手を挙げさせる、発表させる、質問を受けるなど)によって双方向のコミュニケーションをとりながら進めることができ、講師と学生それぞれ意義深い内容になると思います。
テレビ番組を見ていると、やはり双方向のコミュニケーションが大きな効果を発揮しているようです。テレビ番組の有名な司会やコメンテーターの方の講演を聞いたり見たりすることがあるのですが、テレビ番組では「話がうまいなぁ」と唸ってしまうことが多い半面、同じ人の講演はそこまで伝わってこないことが多くあります。やはり双方向のコミュニケーションがあるかないかで、全体の雰囲気が大きく変わるのではないかと感じます。
しかし、講義や講演、プレゼンテーションでは十分なコミュニケーションがとれません。テレビ番組のようにはいかないと思います。それでも、聴衆の反応を知っているかのような話の組み立てにすることで、聴衆が参加しているような雰囲気を少しでも出せるのではないでしょうか。
聴衆は講義や講演、プレゼンテーションをただ聞いているだけではありません。聞きながら「なるほど!」「知らなかった!」「それは違うと思う」などと、心の中でいろいろな反応しています。テレビ番組はそうした反応が出演者の口から出てきて、それに司会やコメンテーターが答えていく形ですが、講義や講演、プレゼンテーションでは聞こえなくても聴衆の反応を予想して講師が自らの話に含め、それに答えていけば疑似的なコミュニケーションが成立するのです。
例えば、話をしながら「さて、今の話を聞いて〇〇と思ったのではないでしょうか?」「〇〇という疑問が湧いてきますよね」などと述べ、それに対する応答を述べることで擬似コミュニケーションができます。あるいは、「この話を以前〇〇にしたら、『▷▷』と言われまして・・・・・・・」という形で仮想の人を登場させても良いでしょう。そういう時は、まるで演劇を見ているような感じになり話がスムーズに入っていきます。
実際、こうした講義の得意な先生の話を聞いた時、とても感激したのを覚えています。その当時は学生だったので感激した理由は分からなかったのですが、振り返ってみると疑似的とはいえコミュニケーションを取れていたためではないかと思います。
こうしたプレゼンテーションはあまり見たことはありませんが、もしかしたら高等テクニックなのかもしれません。参考になれば幸いです。