水曜コラム「今週前半のニュース」第10回:地方自治体のAI普及は何のためにあるか

 今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

 地方行政とAI 職員減克服のカギとなるか

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 AIの導入は不可避の流れではあるが、職員を「減らす」ためではなく職員を「活かす」ために導入してほしい。

 学生から「AIが普及すると就職先が減るのではないか?」という心配の声をよく聞きます。確かに、AIの普及で既存の職業の半分がなくなる、という研究結果もあるようです。囲碁や将棋では、すでにトップ騎士がAIに敗れる事態も起きています。これまで人間が関わってきた仕事が、速さも正確さも優れているAIに奪われる、という不安も理解できます。

 公務員の世界でも、ルーティンワークの部分はAIの方が良いと感じます。しかし、公務員の仕事はそれだけではありません。クリエイティブな仕事やコミュニケーションの必要な仕事の重要性がますます高まるので、人間の出番も増えてくると考えます。

 私が勤めていた地方公務員の世界では、地域の実情を踏まえた政策の工夫がますます必要になるでしょう。これをAIだけに任せるわけにはいきません。もちろん、情報収集や解析などAIが活躍すべき部分もありますが、自動的に最適な政策を作ってくれることはありません。人間のクリエイティブな部分が非常に重要になってきます。

 また、人口減少のなかで財政規模も縮小を迫られ、懸念されるサービス水準の低下に納税者の合意を得る必要があります。納税者に説明し意見を政策に反映するには、人間同士の信頼関係が必須です。AIに任せる訳にはいかないでしょう。

 このように、AIは公務員の仕事にも深く入ってくるとは思いますが、それで人間の必要性が低下するのではなく、むしろさらに高まるのではないかと考えています。

 紹介する記事は、AIを職員減克服のカギになるかどうかを述べていますが、そうしたがあったとしても、それだけではないと思っています。AIによって職員を減らすことだけでなく、職員を活かすことも、同時に進めて行かなければならないのではないでしょうか。

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