水曜コラム「今週前半のニュース」第12回:縦割り行政を打破することについて考える
今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
デジタル庁など、縦割り打破をめざす新たな組織の発足が続く可能性がある。二重行政や組織の肥大化を抑制していかなければならない。
菅政権の目玉政策として「デジタル庁」が創設されました。これはタテ割り行政のなかでデジタル化が省庁ごとにバラバラになっていたために、コストもかかり効率的でなかったことが創設の背景にあります。デジタル庁の創設によって省庁全体にわたってデジタル化が進めば、タテ割り行政の弊害を打破できたことになるでしょう。
今回紹介するニュースは「子ども庁」の創設です。少子化の進展はこれからの日本にとって最重要とも言える課題であり、タテ割りの弊害があるならば打破すべきです。子どもを主な対象とする省庁で思い浮かぶのは厚生労働省と文部科学省です。前者は保育園や児童手当などを進め、後者は教育行政となります。もちろん、子どもを含めたあらゆる年齢層への政策は大半の省庁で実施しているわけですが、子どもを主な対象とした省庁はこの2つが代表的と言えるでしょう。
では、デジタル庁と比べてみて子ども庁の創設はどのような意義があるでしょうか。まず、政策の重要性としてはどちらも互角と言っても良いと思います。次に、縦割りの弊害が大きそうなのは、どちらかと言えばデジタル分野だと思います。これはあらゆる政策に共通するもので、連携によって効率性が飛躍的に向上するからです。これに対して、子どもについては先ほど述べたように所管する省庁がそれほど多いわけではありません。タテ割りの弊害はデジタル分野ほどではないように見えます。ただし、記事だけでは提言の内容が詳しく分からないのですが、少子化の要因がタテ割りにあるという有力な根拠があれば、また、子ども向けの政策をより広い視点で捉え、すべての省庁が子ども向けの政策に最優先で取り組むことまで視野に入れているとすれば、タテ割りの弊害を打破する意味も大きいと思います。
ただし、デジタル庁にせよ子ども庁にせよ、新たな組織が加われば、既存の組織にも手を加えなければ肥大化を招いてしまいます。新たな組織の設置の方が注目を集めがちですが、既存の組織をどうするかも同等に重要です。
デジタル庁の設置に関しては、各省庁に置かれている既存のデジタル推進分野を移転・集約する形となるでしょう。とはいえ、デジタル庁で進められるデジタル化を活かして行政を推進するのは既存の省庁ですから、デジタル庁に集約しただけではデジタル庁内部にタテ割り集団が生まれてしまいかねません。また、子ども庁に関しても、既存の組織をどうするかも合わせて検討しなければ、同じことが既存の省庁と子ども庁で重複する二重行政を招いてしまうかもしれません。これも記事だけでは提言の内容が詳しく分からないのですが、おそらく今後の論点になってくるのではないかと思います。
私はタテ割り行政の打破や組織の不断の見直しは必要だと考えています。組織が安定することも大切ですが長く続けば硬直化し、政策の変化を抑えてしまう可能性も否定できません。子ども庁が創設されるかどうか結果も大切ですが、こうした議論を通じて組織のあり方を積極的に見直す姿勢も同じく重要だと思います。