日曜コラム「マイ・オピニオン」第42回:電子書籍を出版して感じたこと
自分の思いを発信する方法がネット社会のおかげでたくさんありますが、大学に勤める身として従来型の紙媒体書籍が最も大切という文化があります。紙の本は改変ができないこと、所蔵ができること、そして学術的な雰囲気などが特徴で、研究のうえで最も重視されています。発信する時も著書として紙の書籍を発刊すること、情報収集する時もネットに偏重せず紙の書籍から引用することが求められます。
もちろん、ブログの記事やnoteへの掲載など、紙の書籍とまったく同じコンテンツをネットから発信することはできます。しかし、ネットは改変が容易にできること、所蔵ができないこと(印刷が必要)、そして学術的な雰囲気などが乏しいことから、努力の結晶として完成した研究成果をネットで発信することはほとんどありません。あるとしてもネット専門の学術誌くらいで、紙になっていないこと以外は紙の学術誌と同じ特徴なので、最近増えています。
おかげさまで、私はこれまで著書の出版もできましたし、情報収集もそれなりに行ってきました。そこで、このたび電子書籍を出版することにしました。詳しい内容は明日の投稿でお知らせしますが、「公務員を志す人へ」というタイトルで、公務員試験を受けようと考えている大学生に向けて、勉強方法などを紹介したものになっています。
今回、電子書籍を出版してみて、紙の本との違いをいろいろ感じたので、そのことを述べてみたいと思います。まず、何と言っても手軽なことです。紙の本は原稿をパソコンで作成し、ファイルを出版社に送ってから紙の校正原稿を修正していきます。何度か修正を重ねて校正を終えて、ようやく出版です。ファイルの段階から書店に著書が並ぶまで、半年はかかります。これに対して、電子書籍はわずか数日です(amazonの場合)。ファイルを出版サイトにアップロードして審査を通過すれば、いつのまにか販売サイトに出ています。もちろん、アップロードの前に書籍のイメージを自分で確認し、修正していく作業は必要ですし、表紙のデザインなども自分で作成しなければなりません。しかし、それらを終えれば印刷がない分、アップロードだけで完成します。
次に、価格です。学術書は安くても2,000円以上はしますし、高いものは8,000円くらいのものまであります。しかも、売れる本ではないので著者の負担も非常に大きいです。大学などからの助成もありますが、ベストセラーのような多額の印税とは真逆の状況になっています。これに対して、電子書籍は無料で出版できます(すべてが無料ではありませんが…)。負担の心配もないのです。しかも、価格は無料の書籍もあれば100円とか980円のものまで多種多様です。価格や販売方法は自分で設定でき、売れれば報酬が得られる仕組みになっています。価格の面でも紙の出版と大きく違うのです。
ただし、電子書籍の内容は玉石混交です。私も読んだことはありますが、紙の本にはない違和感も多くありました。紙の本は信用ある出版社が責任をもって発刊しているので、それだけ内容への信頼も生まれます。これに対して、電子書籍は販売サイトへの信頼がベースになっているわけではありません。もちろん、紙の本をそのまま電子化して販売しているものは紙と同じ内容ですが、電子書籍だけで販売しているものは見極めが難しいと言えます。もちろん安いので失敗しても損失は少ないですし、逆に大当たりのものもあるでしょうが、そればかりではないので注意が必要です(もちろん紙の本も読んでみたら面白くなかった、というものはありますが…)。
いずれにしても、電子書籍はスマホやタブレットの普及によって気軽に使えるツールになっています。紙の本も電子書籍で読む人も増え、電子書籍での出版がさらに普及してくると思います。noteなど、もっと容易に発信できる方法もありますが、とにかく何でも飛び込んで試してみたいと思い、このたび電子書籍の出版となりました。皆さんのご参考になれば幸いです。