火曜コラム「オススメ書籍」第44回:宇賀克也『地方自治法概説 第8版』有斐閣

 タイトルは「概説」となっていますが、索引を含めて470ページに及ぶボリュームの本です。ほぼ2年に1度の改訂が行われていて、第2版あたりも読んでいたのですがボリュームがどんどん増えています。重要な法改正が行われているため、このようになったのでしょう。先月に改訂第9版が刊行されているので、この段階で私が紹介するのは1つ前のものとなります。

 この本は地方自治法の内容が網羅的に盛り込まれていて、2通りの使い方ができると思います。1つはサッと一読して全体像を掴むこと、もう1つは条文の解釈や運用・判例など細かいところを調べることです。したがって、第一の使い方としてひと通り読んでおくことは必要だと思いますが、細かいことを理解しながら読むのは大変です。まずは、おおよそのイメージが掴めればそれでよいと思います。

 その後は、個別に調べる必要が出てきた時に該当する部分を読む形で補っていきます。判例も多数紹介されていて、コラムなども豊富に盛り込まれているので、難しい法律をできるだけ平易に説明していると感じます(それでも法律の専門でない自分には難しい部分がありますが…)。

 なお、さらに細かいことを調べる場合は、本書には参考文献もたくさん紹介されているので、それらを参照すれば良いでしょう。したがって、この本だけでかなり細かい部分まで勉強できるのではないかと思います。

 本書は9章で構成され、地方公共団体(地方自治体という語は法律に出てこない)の区分や広域連携、事務や権能、機関の説明に加えて住民の権利義務や国などの関与などに触れられています。非常に網羅的で、地方自治に携わる公務員でも日頃の仕事で意識していないことも多く、勉強になると思います。

 なお、この本は著者自身の主張や説はほとんど出てきません。教科書としての内容に徹したのではないかと思います。地方自治体の職員にとっては、自分たちの抱える課題や意図する方向性に合うように地方自治法を解釈・運用したいところですが、本書はそうしたところまでは踏み込んでいません(踏み込むと教科書ではなくなってしまうということでしょうか)。

 そこで、地方自治体の現場で地方自治法の規定をどう活かしていくべきかは、教科書レベルを超えて地方自治のスピリットを持った専門書が必要になってくると思います。ただし、いきなりそうした専門書を読むのは基礎が疎かになってしまうので、やはり本書のような教科書で基礎を固めておくべきです。そうした本は以前の投稿でも紹介していますが、これからも良い本をこの欄で取り上げたいと思います。

 その意味で、本書は地方自治に関わるすべての人々が読み、持っておくべき本だと思います。

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