日曜コラム「マイ・オピニオン」第47回:公務員に商売感覚は必要か

 先週の投稿では「行政は利潤を追求しない」は必ずしも該当しないことを述べました。今週も関連するテーマですが、「公務員にも商売感覚が必要である」ということを述べたいと思います。

 もちろん、公務員が企業やお客さんに営業活動や売込みなどを行うわけではありません。しかし、私が市役所に入って初めての仕事が今回のテーマを深く考えさせるきっかけになりました。それは、税務に関する証明書を発行するものでした。証明書を取りに来た市民に申請書を書いてもらい、こちらが証明書をプリントして押印し、発行します。手順が決まっていたので、シンプルです。

 そこで先輩職員に教わったのは「『ありがとうございました』と言わないこと」といったものでした。発行の際に手数料を受け取るので、スーパーやコンビニのレジ作業のようなことをします。お金を受け取り、レシートを発行してお釣りを渡すなどは、まさにレジです。いつも買い物をしていると、店員から「ありがとうございました」と必ず言われます。なので、つい同じことを言ってしまいそうになるのですが、商売ではないからそう言わないと教わったのです。

 先輩職員からは「お疲れさまでした」「ご苦労様でした」などと言うように指導を受けました。確かに手数料はごく少額ですから発行にかかるコストは回収できません。スーパーやコンビニのように利潤が生まれるわけではありませんし、おそらく公的な手続きのための書類として申請していると思われるので、「お疲れさまでした」「ご苦労様でした」というのが正しいと思います。

 しかし、公務員の仕事に商売の要素がまったくないかと言えば、決してそうではありません。例えば、多くの税収が獲得できるよう、企業誘致などを行います。従業員の雇用に基づく住民税や企業の利潤に対する法人住民税などの税収が生まれ、サービスの拡充を行うことができます。そこで、多くの地方自治体は企業誘致を積極的に行っています。

 また、最近では定住促進にも力を入れています。特に就職や子育ての段階で若年層が流入してくれば、長期にわたる税収や人口の増加につながります。そこで、若年層に定住してもらえるよう、魅力の発信や生活環境の整備などに力を言えています。

 こうした政策は、企業にとっての利潤とはやや異なるものの、税収の増加という大きなメリットを自治体にもたらします。どうすれば企業に来てもらえるのか、どうすれば若者が定住してくれるのかを考えることが必要になります。これは、まさに公務員の商売感覚と言えるでしょう。

 私は、買い物などに出かけると、どのような品ぞろえをしているのか、どのようにアピールしているのかなどを見ています。公務員の仕事に直接関係するわけではないものの、仕事に大きなヒントが隠されているのではないかと思います。公務員の商売感覚は、これからも大切だと思います。さまざまな機会をとらえて、商売感覚を研ぎ澄ますことをオススメします。

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