金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第28回:テーマを考える時は「自分らしさ」を打ち出す
文章やプレゼンテーションでは、まずテーマを考えなければなりません。最初は考えがいろいろ広がるのでザックリしたものになりますが、情報収集などを進めていくと論点や関心のある点も明確になってくるので、テーマも徐々に絞り込まれていきます。
こうしたプロセスのなかで、テーマの中に「いかに自分らしさを表現するか」にも気を配ると良いでしょう。私の場合、大きなテーマとしては「みなと」と「エネルギー」の2つがあります。これだけならば、ありきたりのテーマです。
しかし、「みなと」については、自分に身近な地域を題材としながらも、身近な地域への考察を通じて都市再生という全国的課題にも関係している点や、先人が打ち出してきた港湾理論の発展にも寄与することを訴えることで、自分のテーマが事例研究を超えた普遍性を持っていることを前面に出しました。また、こうした内容を取り込むことによって、自分の仕事にも新しい見方を与えることができました。
こうした点は当時、大学院生だった私に指導いただいた恩師の先生からのアドバイスによるものです。今は自分が大学生や大学院生のサポートをしていますが、私が得たことを伝えていけるようにしたいと考えています。
また、「エネルギー」については、大学院を修了後に進めてきました。自分が従事してきた経験を通じて得た知見を示すだけでなく、地方自治としての側面や国のエネルギー政策への寄与にも触れました。また、エネルギーについては「賛成か反対か」の二項対立が見られるのですが、これを克服するための視点についても提示しています。これは大学院時代に指導いただいた経験を活かして自ら打ち出したものですが、自分たちのメリットだけではなく、さまざまな主体にもプラスの側面があることを述べたところが、自分らしいものになったと自負しています。
このように、文章やプレゼンテーションは、大学への単位取得や業績のカウントも大切な目的ですが、自分らしさを表現する手段でもあります。「論理性」や「客観性」といった点が重視されるのはもちろんですが、「テーマ」と「メッセージ」を伝えるために存在するものだと考えます。「自分らしさ」もまた、「論理性」「客観性」とともに「テーマ」と「メッセージ」を伝えるための要素になるものです。
ただし、「自分らしさ」は感情に訴える部分だと思いますので、あまり前に出すぎるとよくありません。「論理性」や「客観性」が十分に備わって、そこに「自分らしさ」を加えることによって、さらに伝わるものにしていただきたいと思います。