ここに注目!公務員が気になるニュース:東京一極集中と地方分散をめぐる大学と企業の動きについて

 このコーナーでは、今週ツイートしたニュース記事の中から特に印象に残った1つをピックアップして、掘り下げてみたいと思います。

 今週は、次の2つの記事を取り上げたいと思います。

本社機能の地方移転が広がる、在宅勤務の浸透で企業の意識にも変化

 この記事について、私は次のようなコメントをしました。

 地方の活性化に期待が高まる。一方で企業のリスク分散(大規模地震対応)が進むなかで、都民の対応は遅れがちに見えてくる。

 もう1つ、次の記事を取り上げたいと思います。

地方から東京23区内の大学進学は2万6222人で横ばい 都が定員増の抑制撤廃求め要望「合理性乏しい」<深掘りこの数字>

 この記事について、私は次のようなコメントをしました。

 都の立場と地方の立場が真っ向から異なる。非常に判断が難しい問題。

 今回は、2つの記事を対比しながらコメントしたいと思います。大学は地方分散を抑制し、企業は地方分散を進めようとしていて、まさに反対の動きのように見えます。ただし、大学に関するニュースはは全体的かつ政策によるコントロールの話であるのに対して、企業に関するニュースは個別かつ自主的な話であるから、それぞれ次元が異なっているので、単純に対比することはできません。ただ、何となく企業と大学の動きが合っていないような印象を受けます。

 個々の大学が首都圏の災害リスクを考慮して地方に移転する動きは、まったくないと言って良いでしょう。むしろ、都心回帰によって学生の確保に奔走しているように見えます。記事にあるように、首都圏出身の進学者が増えてくれば都内の大学進学へのニーズは拡大するでしょうから、大学の地方分散見直しは確かにニーズに応える意味で合理性があるように見えます

 しかし、現在の首都圏出身の進学者は、かつて団塊世代や団塊ジュニア世代が地方から移動してきた結果、その子や孫が首都圏出身となったケースも多いです。つまり、就職によって定着した層が長い時間をかけて首都圏出身者となったことになります。

 だとすれば、企業の地方分散が今後本格的に進めば、人材も首都圏から地方に分散する可能性が高く、大学もその動きに追随することも考えられるのではないでしょうか。もちろん東京は日本の中心として、また国際都市としての役割を保持すると思いますが、集中の度合いを低下させ地方にもある程度分散していくこともありうると思います。それは企業の記事にあるような動きが今後どれだけ本格化するかにかかっています。もしそうなれば、長期的には首都圏出身者の進学ニーズが縮小し、大学にも地方分散の動きが出てくる可能性もあるでしょう。だから、大学の地方分散抑制を求める動きは、今後の企業の動向次第では合理的とは言えなくなるかもしれません

 東京一極集中は、大学と企業というキャリア形成の大きなチャンスがいずれも東京に集中していることから生じるものだと思います。その一角をなす企業が東京一極集中を回避する傾向が強まってくれば、大学立地のあり方にも大きな影響を与えるのではないでしょうか。

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