水曜コラム「今週前半のニュース」第11回:京都市の別荘税について考える
今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
固定資産税が居住前提になっているのが時代とズレている、という見方もできるかもしれない。
京都市は大都市で世界的な観光都市なおかつブランド力も強いにもかかわらず、財政事情はかなり厳しいという報道をよく聞きます。京都市の財政収支中期見通しによれば、人件費削減など現行の計画に基づく改革だけでは2021~33年度で総額5620億円もの財源不足になるようです。令和3年度の予算規模(一般会計)が約1兆円なので、年間予算の半分に達することになります(新型コロナ対策を除けば例年の予算規模はさらに少ないので、財源不足はさらに大きいと言えるかもしれません)。
歳出削減はどこの地方自治体でも積極的に行っています。むしろ、改革期間を終えても次の改革が待っていて、いつまでも終わらない状態です。仕事が減っているわけではないのに正規職員の減少と非正規雇用の増加が続き、職員の負担は増えているとも言われます。立ち止まって考える余裕すらない「改革疲れ」の状態になっています。
こうした中で、京都市はさすがに歳出削減だけでは耐えられないのか、新たな課税を行うことになるというニュースが今回の記事です。
それにしても、別荘税というのはいろいろと違和感があります。まず、固定資産税との関係です。固定資産税は土地や家屋などの所有者に対して、人が住んでいてもいなくても課税されます。今回の別荘税の対象は別荘や管理されている空き家なので、人が居住していないことに対する固定資産税の上乗せとも言えるでしょう。逆に言えば、固定資産税は居住者がいることが前提になっているのかもしれません。ただ、固定資産税は全国一律の税制なので、京都市だけの不均一課税は困難です(かつて不均一課税の試みはいくつかあるが、容易ではない)。それが別荘税という新たな課税を生み出したように感じます。
そして、別荘税は誰かが住んでいれば課税されないようです。住んでいる人は所得に応じて住民税が課税されますし、生活すれば消費税なども負担します。だとすれば、別荘税は実質的に住民税や消費税の代わりに課税されるものとも言えるかもしれません。
これらを合わせて考えてみると、別荘税は固定資産税の上乗せであり、住民税や消費税の代わりとなるものということになります。いろいろな性質を持つ税だと言えるでしょう。ただし、固定資産税が居住を前提としているのならば、国内で増えている空き家に対応した税制になっていないとも言えます。つまり、時代とズレていることになるのです。それならば、固定資産税そのものを見直すことも必要で、地方税の体系全体から検討する必要があります。
別荘税は今後、有識者会議が諮問を受けて議論するようです。制度の細かい内容は分かりませんが、課税上の重大な問題はなさそうに見えます。ただ、これまで述べたように他の税目との区分を明確にした方が良いのではないかと感じます。おそらく、これからも新たな財源確保は必要で、別荘税に続く新たな税目も検討される可能性もあります。特に、市民の負担増加にも切り込む時が訪れる可能性も否定できません。そうした時に、課税への理解を得るには整合性をもった課税の根拠が必要になると感じます。
いずれにしても、京都市の動向はこれからも目が離せません。