日曜コラム「マイ・オピニオン」第45回:公務員が深夜の会食を報道されることは覚悟しなければならない
新年度を迎えるに当たり、公務員が歓送迎会やお疲れ様会などで深夜に飲酒を伴い大人数で会食することや、営業自粛時間を超えてお店に居座っていたことについて、新型コロナ対策の本丸となる厚生労働省や県庁の職員が行ったと連日のように報道されています。こうしたニュースが流れると、「公務員がしているのだから自分たちも批判される筋合いはない」「その程度のことで報道されることが異常だ」「模範となるべき公務員が情けない」といった反応が周囲から聞こえてきます。
私が公務員だった頃は新型コロナはありませんでしたが、新人として入った初日から「飲酒運転だけは絶対にしてはいけない」と強く言われました。これは法律違反ですから当たり前ではあるのですが、飲酒運転で事故などを起こせば「信用失墜行為」として、場合によってはクビになってしまうこともあります。おそらく、民間企業の方ならば飲酒運転をしても法的なペナルティはあるにしても、よほどの事故などでなければ報道されることはないかもしれません。しかし、公務員の場合は、小さな違反でも報道されるケースが多いです。公務員の行動は社会的な影響が大きく、公務員への信用を失墜させれば人々の法律遵守に影響を与えてしまいます。そのため、先の「飲酒運転は絶対にしてはいけない」という言葉になるのです。
私はもちろん飲酒運転をしなかったですし(今も当然しません)、歩いている時に赤信号の横断歩道を渡るのも躊躇するほどです。特に現在はSNSなどですぐに拡散しますから、決められたルールを守ることに特に敏感になっています。公務員というのは、その意味で少々肩身の狭いところがあるかもしれません。
なお、新型コロナ対策としての飲食は、飲酒運転とは次元が違います。しかし、一定の民主的手続きを経て決められたルールを破ることの社会への影響は、どちらも大きいと言えます。
ただし、新型コロナ対策が間違っているかどうかは別に議論が必要です。それは、国民の支持に基づく民主的な意思決定を要するものですから、もし新型コロナ対策が間違っていると思うのならば、こうした公務員の行動を非難したり「公務員が破っているのだから自分たちも破って良い」という言い訳に使ったりするのではなく、むしろ公務員の行動を国民が擁護することが筋とも言えると感じます(自分が元公務員だったから、つい擁護してしまうのかもしれませんが…)。つまり、「国民が決めたルールそのものが間違っている、だから公務員の行動は国民の思いを率先している。これを機に国民的議論をして、ルールを変えようではないか」ということではないかと思います。
とは言っても、現状のルールの中で公務員のこうした行動は、信用失墜をもたらしかねない重大なものです。公務員という職業柄、このような取り上げ方をされるのは宿命だと思います。公務員はきわめて慎重に行動してほしいと思います。