土曜コラム「今週後半のニュース」第50回:新幹線が新たな漁業振興策を呼び起こす?

 今週の後半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

新幹線で鮮魚 本格輸送へ 北陸発 首都圏の小売店に JRが26日から 駅からトラック配送

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 都内に集積するアンテナショップにも置いて、地方の海の幸を新鮮な状態で提供できるようになると、高単価で需要拡大が見込めるのではないか。

 新型コロナウイルスの影響で人の動きが大きく制約され、交通機関の経営状況が大きく悪化しています。特に新幹線の乗客数が激減し、運営するJR各でボーナス水準が大幅にカットされるなどの報道もよく見かけます。 こうした事態に対して、空席を利用して荷物を運ぶ取り組みが航空や新幹線などで行われているようです。

 通常の荷物の輸送はトラックや海運・航空などで分担されていますが、それぞれ輸送のスピードや発着地・ダイヤのきめ細かさ、輸送コストなどによって強みと弱みに違いがあるので、荷物の内容によって分担されてきました。また環境への配慮からトラック輸送から海運へのモーダルシフトも進められたり、さまざまな大規模災害への対応から、リスク分散を図るため輸送手段やルート複数確保することなども行なわれています。

 こうした中で鮮魚の輸送は鮮度が最も重要なため、スピードが命です。したがって、輸送手段としては近距離であればトラック、長距離ならば航空になります。しかし、航空はどうしてもコストが高くなるため、鮮魚の中でもブランド価値のあるものしか輸送することができません。

 以前、多くの道県がアンテナショップを出している銀座で話を聞いたのですが、鮮魚の販売はやはり難しいということでした。 海の幸を売りにしている地域にとっては、輸送手段の制約がアンテナショップの可能性を小さくしているのです。

 今回の記事は、新幹線という身近な高速輸送手段、これまでのような人の輸送ではなく荷物の輸送手段として活用される可能性を示しています。しかも、販売先は記事によると庶民向けの大規模スーパーマーケットチェーンなので、それほど高級な鮮魚でなくても、しかも一定の規模で販売可能であることになります。
そこで、アンテナショップでも多くの鮮魚を販売することによって、海の幸のブランド価値をさらに高めることができるのではないかと思います。 アンテナショップですから どのような商品がどのくらいの価格で 売れるのかをモニタリングしていくことによって、そこから大都市への鮮魚の販路拡大と収益増加につなげることができるのではないでしょうか。

 これまで新幹線と漁業は何の関係もなかったように思いますが、新型コロナの蔓延が新幹線を新たな漁業振興策への切り札にするかもしれません。

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