論文の技法:目次の作成から文章執筆への流れ
今回は、論文の構想を立てるための方法を述べます。
論文の構想を立てる際には、「自分の最終的に言いたいこと(結論)」「結論までのプロセス(展開)」が必須になる。展開は、そのまま 目次になるから、展開を作れば目次もできる(一方、タイトルは後でも良い)。私の上司に研究報告の目次を見てもらった時に、「目次ができれば、論文の半分は出来たものだ」と言われて安心したことを覚えている(上司も研究プロジェクトのトップとして安心したのだろう)。
ここでは、展開の作り方について述べたい。まず、大まかな目次(章)の構成とそれぞれの要旨を考える。書くのが単行本でもない限り、卒業論文やレポートならば章の数は3~5くらいでよい。典型的な展開「序論→本論→結論」とすれば、本論で1~3章分となる。
次に、本論での章ごとの展開、すなわち節の構成とそれぞれの要旨を考える。さらに、節の構成など、少しづつ細かく作っていく(章や節の名称は、それぞれタイトルになる。また、節の構成は小見出しとして使うこともできる)。細かく作れるところは、パラグラフの構成まで考えておきたい(この段階で無理に全部作る必要はない)。
なお、文字数の配分もイメージしておくと良い。必要な文字数のうち、序論と結論で2~3割、本論で7~8割が目安となる。したがって、5000字の文字数ならば本論で3500~4000字だから、本論を3つの章に分けて1000字、1000字、1500字などと配分する。図表やグラフなども文字数に含まれることがおるので、何を入れるか想定しておきたい。パラグラフは200~500字くらいになるだろう(結局、どんなに長い論文も短い文章の積み重ねなのだ)。
話を戻すが、パラグラフの構成をすべて作らないと文章を書き始めてはいけないわけではない。パラグラフの中には、あまり考えなくても作れる部分もあれば、深く考えなければ作れない部分もある。例えば、現状分析や地域の概要などを作るのはそれほど難しくないが、自分の意見として最も述べたい部分はしっかりと考えてパラグラフを作らなければならない。
前者は、構想が完成する前に文章化しても問題ない。パソコンのありがたいところは、途中の部分から書いても良いこと、後から容易に訂正できることだ。原稿用紙で書く時代は書けるところから書くことができなかったが、今はできる。このメリットを十分に活かして、書けるところから書いておきたい。
書けるところを書いている間に、できていなかったパラグラフの構成を少しずつ作っていく。こうしたところは時間をかけて考えるか、何かの拍子にパッとひらめくかで、できていく。
パラグラフの構成ができたところも書けるようになったので、文章化していく。並行して、パラグラフの構成ができていないところを作っていく。こうして、少しずつ構成が文章に変わっていく。
この作業を1日のスケジュールに落とし込むならば、午前中に文章を書き、午後~夜にパラグラフの構成を考えたり書き直す部分を考えたりすることを薦めたい。午前中は生産的な作業に向いているので、文章を書くのに適した時間帯である。また、午前中に文字数が増えれば早めに達成感が得られて午後の仕事に心の余裕が出る。
一方、午後~夜は午前中に書いたことを頭の片隅に残しながら別の仕事もしたりリラックスしたりするが、その間に考えやヒントが浮かんでくることが多い(無理矢理ひねり出すよりも万全の準備をして「待つ」ことが効果的。待つ間に仕事も進むので生産性もそれほど下がらない)。それを基にして翌日に書くことをメモしておけば、これを次の日の午前中にすぐに文章化できる。
最終的には、パラグラフの構成が完全にはできていない中で「見切り発車」で書き始めることもあるかもしれない(その部分が多いか少ないかで、昨日書いたテーマ「固めてから書くか、書いてから固めるか」のスタイルの違いになる)。見切り発車が多くなると、書いていく中で予定していた結論を変えたり、一通り書いた後の見直したりする可能性が高くなる。
ちなみに、私の文章執筆のプロセスは、まさにこれである(昨日述べたが、見切り発車も多い方だと思う)。単なる個人的経験ではなく、上記のように脳科学的にも一定の根拠がある方法だと思う。
もちろん、このような書き方は、ある程度の日数がかかる。締切の直前にバタバタ書くようなスタイルには向かない。スピードはもちろん重要だが、考える時間を十分に割かず慌てて書いてもロクな内容にはならない。また、直前まで何もしないのは精神衛生上もよくないし、直前に書く際に要する時間や負担も意外と多い。少しずつ書き進めた方が安心感もあるし(油断を生まないように気をつけてください)、結局はトータルの負担も少なくて済むので、良いことずくめだと思う。