水曜コラム「公務員の学び」第2回:「働きつつ学ぶ」ことの大切さ
「働きつつ学ぶ」。私の恩師の先生が学生に薦めておられた。社会に出て給料をもらって自立して生活が営めるようになると、プロ意識が芽生えてくる。もっと質の高い仕事をしたい、もっと社会に貢献できるようになりたい、という気持ちが高まるようになる。
特に公務員の場合は、税金から給料をいただいている。周囲から求められるもの(バッシング含む)も大きい。政策で課題を解決し、税金に見合うサービスを提供したい。こうした日々の中で、精進を重ねている。
精進の方法として、最も有益なのは学ぶことである。方法はいろいろある。幅広い分野のニュースに触れる、書籍を読む、いろいろな国や地域を訪れて良い面を自分の国や地域に取り入れる、などがであろう。もっと時間とお金をかけて、大学院で学ぶ公務員も多い。実は、私もその1人であり、そこから教員への道へを進むことにになった。
もともと学ぶことは好きな方であった。しかし、大学生の時に一生懸命勉強した記憶はない。いわゆる普通の学生生活で、アルバイトの思い出の方が多い。「大学で学んだことは社会で役に立たない」とよく言われるが、正確には学んだものがあまりにも少なく、社会に活かせるものではなかった。
しかし、大学生は社会人のようなプロ意識を持っているわけではない。思いっきり学べる時間と教材があって教えてくれる先生がいるのに、何を学べば質の高い仕事に結びつくのか、社会に貢献できるのかが、十分に見えていない。その結果、学ぶことが疎かになり、社会に役立つものにならない、というのが真相ではないか。
私は幸運なことに、市役所に入って4年目に大学院に派遣される機会をいただいた。3年間で仕事も少しずつ覚え、プロ意識もそれなりに高まっていた。そこに勉強嫌いではない私が大学院に行ったおかげで、実に多くのことを学ぶことができたのである。「大学で学んだことは社会で役に立たない」のではなく、「社会で役に立つ学びを大学院ですることができた」のである。私は経済学系の大学院で学んだが、大学は経営学部であったので、経済学はまったくの初心者であった。それでも社会に役立つ学びができたということは、「社会で役に立つ学びを大学でもすることはできる」のである。
「働きつつ学ぶ」ことは、社会で役に立つ学びを選択し、実践の場として仕事に活かせる特権がある、ということである。私は地方公務員から大学教員へと進んだが、教育を通じて社会に貢献できる存在でありたい、という気持ちは変わらず持っている。もちろん、大学での研究も社会で役に立つものであることを心がけている。
私が現在所属している大学にも、現役の地方公務員が大学院生として学んでいる。ちょうど20年前の自分と同じことをしている。あの時、私が学んだこと、感じたことを、今度は大学院生に学んでほしい、感じてほしいと日々思いながら、教壇に立っている。