金曜コラム「私が学んできたこと」第2回:人がAと言うなら、自分はBと言う

 社会や経済の問題に対して、「絶対にこうでなければならない」と言えるほどの明確な解決策は、ほとんどないだろう。さまざまな状況や条件を考慮して「おそらくこうではないか」というニュアンスになることが多い。ただし、それでも自分の立場を明確にするためにはある程度断定することも必要である。そこで、バランスを取ろうと、本心では「おそらくこうではないか」と思いつつ、文章では「絶対にこうでなければならない」という形で書くことになる。

 しかし、自分の立場を明確にするためには、もう1つの方法がある。それは「多くの人はAだと言うが、私はBだと思う」と、一般論とは異なる主張をすることである。先に述べたように、「絶対にこうでなければならない」と言えるほどの明確な解決策はほとんどない。Aという意見も、多数派ではあるが絶対でもないのである。そのため、少数派の意見を述べることで、自分の立場が明確になるのである。

 もちろん、Aの意見が絶対でなければ、Bの意見も間違っているわけではない。しかも、多数派の意見は勢いで支持が広がる部分もあるから、Aの意見に確固とした根拠がない場合もある。そこで、あえてAのスキをついて、Bの意見を強調するのである。私の恩師は、あえてそうしたスタンスをとることで、自分自身で考えるとともに、自分のオリジナリティを確立しようとしていたのではないかと思っている。

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