土曜コラム「今週のニュース雑感」第2回:出生率の大幅な低下

 twitterにはコメントを加えなかったが、昨日、日本の出生率が1.36で12年ぶりの低水準にとどまったことが報道された。(日本経済新聞のWEBニュース朝日新聞のWEBニュースなど)昨年まで1.4台の水準で少しずつ低下しつつ一進一退を繰り返していたのが、今回は大きな低下となった。

 人口減少を抑制するために出生率の回復は絶対に必要である。若年層の地方から東京への流出を抑制することも含めて、地方創生が国と地方あげて強力に推進されてきた。しかし、地方創生の5年間の成果は好ましいものではなく、人口減少と東京一極集中に歯止めがかかっていないことが露見している。そうした状況を踏まえて新たな地方創生ビジョンも打ち出されたが、期待できる方策は少ない印象である。次の5年間への見通しも暗いと思っていたなかで、今回のニュースは追い打ちをかける形になったように思う。

 出生率低下の大きな要因は、晩婚化・非婚化である。今回、平均初婚年齢は夫が0.1歳、妻が0.2歳上がり、晩婚化がさらに進んだ。ただし、この傾向は政策によって食い止めるられるものであろうか。婚活イベントの開催など出会いの場を作ることは政策として実施できても、結婚への行動を政府が直接働きかけることはできない。できることをどこまでするか、逆に言えばできないことをできないとどこまで割り切れるかが重要である。

 また、豊かさの獲得と晩婚化は不可分である。これまで豊かさを優先し、これからも重視していくなかで、晩婚化を抑制するには両者の関係を絶つ何らかの要素が必要ではないか。

 政策は、相互にトレード・オフとなるものがある。かつて、「経済と環境」はその代表であった。最近では新型コロナウィルスへの対応でも「命か経済か」が議論されている。どちらも重要なのだが、一方を過剰に重視しすぎると他方が疎かになってしまう。出生率もまた、豊かさとの選択で疎かになっている可能性があるかもしれない。

 もう1つ気にかかるのが、出生率の目標だ。人口水準を長期安定的に維持するために必要な出生率は2.07(人口置換水準)とされている。そこで、2030年の目標を1.8(希望出生率)として定め、2040年に2.07に達することを想定している。あまりにも急激な回復をめざしていないだろうか。一進一退の状況から急低下となったことで、目標の現実味はさらに後退した。実現可能な目標でなければ、実現へのモチベーションも生まれないと思う。

 この問題は、私も非常に強い関心を持って推移を見守っている。述べたいことはもっとたくさんあるので、今回はニュースの衝撃をお伝えするにとどめ、今後も発信を続けていきたい。

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