水曜コラム「公務員の学び」第5回:担当業務を学びでレベルアップ
私が大学院で学ぶ機会を得たのは、所属していた市が派遣してくれたからである。学費等は市に負担していただいた。そのため、やはり市が直面する政策課題をテーマとして学ぶことが必要と考え、私は「港の活性化」を大学院の研究テーマとした。
さらに、研究成果は机上の空論ではなく実践を見据えたものでなければならない。港の活性化について研究する目的は、自分の教養を深めることではなく実際に活性化することである。税金から学費をいただいて学ぶということは、学費分を活性化による税収増で生み出すくらいの気概が必要であろう(ただし、実際に税収が増えたかどうか検証することは難しい)。
大学院に派遣されることは、学びの機会としてはかなり本格的だが、そうしたチャンスは誰にでもあるわけではない(私は本当に幸運であったと感謝している)。フルタイムで働きながら、自己負担で学ぶ人の方が多いだろうし、大学院でなくても単発の勉強会や読書会などに参加することも立派な学びである。
ただ、どのような学びにしても、「自分の強み」を持つことが必要である。そのためには、自分の担当業務・所属分野を対象にすることが最も近道ではないか。なぜならば、以前の投稿でも述べたように職場の経験は何よりも貴重な情報源となるからである。私自身も、大学院時代は「港の活性化」をメインテーマとしたが、市役所に戻ってからは財政課に配属された。そこで、大学院時代のテーマから離れ、財政や行政評価(私が導入担当になったので)の研究に切り替えた。仕事をメインにしながら、同時に研究のための情報も集まり、定期的に論文を執筆することができた。
そして、せっかくなので研究の成果を担当している仕事に生かしてもらいたい。実践を想定した研究ができるのもまた、実務家の強みであろう。私は大学に籍を移して研究者となったが、研究した成果を自ら実践できる場を失ったとも言える。そこで、今でも公務員の方と頻繁にコミュニケーションをとったり、政策審議の場に積極的に参加している。公務員は実践の場を持つという意味で、恵まれた環境にあるのではないか。
もちろん、学ぶことそのものが楽しい、という人もいるだろう。例えば、高校時代に勉強した歴史を学び直したい、英語が話せるようになりたい、こうしたことも素晴らしい学びである。その意味で、この投稿は仕事に関連する学びに限定しているのだが、そうであれば担当業務で貴重な情報を得られる環境と、研究したことを即座に実践できる環境を生かしてほしい。それは、研究に必要な「自分の強み」を構築することであるとともに、勤め先つまり地域にとっても有益なのだから。