土曜コラム「今週のニュース」第9回:公務員の残業

 今週もいろいろなニュースにコメントしたが、今回は新型コロナ以外から次のニュースを取りあげたい。

 若手官僚、7人に1人が辞職意向 30歳未満男性、数年内に

 このニュースに関して、私は次のようにコメントした。

 崇高な使命感を持ってせっかく公務員になったのに、続かないような職場ではいけない。使命感が強ければ強いほど、現実に落胆してしまうのではないか。

 このニュースは、国家公務員総合職、いわゆるキャリア官僚に当てはまると思う。公務員試験対策の本などで紹介される国家公務員の魅力は、「大きなビジョンを持って国を創る」などと紹介される。国の発展に貢献したい、という志はとても尊い。そうした動機で超難関試験を突破して晴れて国家公務員になれば、「さあ、頑張ろう」という意気揚々な気持ちになるのは当然であろう。

 しかし、仕事を始めてみると、何か違和感がある。まず、仕事が忙しい。公務員の残業時間は、特に国家公務員の総合職が多い。いくら若くても、体力を消耗してしまう。そして、残業の理由が他律的業務、例えば国会対応などが多いことである。つまり、国会での答弁(議員の質問に政府が答える)原稿を作る。質問内容は議員次第で、野党からの追及にも答えなければならない。内容の質問は建設的なものばかりとは限らない。さらに、年功序列で昇進は遅く(若手のうちは同期で差があまりつかない、人材育成上の目的という)、頑張った人が報われるとは限らない。昇進の時期には上司や政府の都合で必ずしも有能な職員が選ばれるとは限らない。そのうえ、国民からのバッシング、天下り(民間企業等への再就職)の機会も少なくなっている。こうした中で、最初の気概は失われ、辞職を考える職員が多くなると思われる。

 こうした状態を打破するためには、何が必要だろうか。おそらく、「早く活躍したい」という思いが強いのではないか。高給を望む人は大手民間企業に行くと思うし、早く偉くなりたいと思う人は政治家になる方を選ぶだろう。国家公務員はやりがいのあるプロジェクトに積極的に取り込み、思い切って任せることが必要だと思う。やりがいのある仕事ばかりでなくても良いが、励みになる仕事を少しはしたいものである。

 以前聞いた話だが、有能な上司は上に厳しい(そうすることで部下からも尊敬される)一方で、部下には「負けたフリ」をするという。「俺もできないことを君は立派にしてくれる。いやー、君は凄いよ」などと部下を褒めると、「尊敬する上司に認めてもらった」と、その気になって頑張ってくれるという。

 国家公務員としての誇りを全力でぶつけられる仕事を、少しでも若手に任せてはいかがだろうか。

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