水曜コラム「公務員の学び」第13回:読書では著者のプロフィールや謝辞も意外に重要

 本を読む特に集中すべき部分は、もちろん本文です。しかし、それ以外にも重要な箇所はあります。その中でも、あまり知られていないのが、著者のプロフィールや謝辞です。ここでは、特に大学の先生が書いた学術書を中心に著者のプロフィールや謝辞の重要性を述べたいと思います。

 著者のプロフィールが書かれているのは、だいたい奥付け(書籍の終わりに示されている著者名や発行者名・年月日・定価などが印刷されているページ)か目次の後ろです。プロフィールとして紹介されているのは、学歴(大学・大学院)と職歴、これまでの主な業績などです。どれも重要なのですが、ここで重視したいのは学歴です。

 大学は偏差値で序列されることが多いですが、ここで重視すべきは大学や大学院のレベルではなく、「どのような研究環境で過ごしてきたか」です。私自身は経済学系の学歴なので経済学に特有なのかもしれませんが、経済学には多様な学派があり、経済現象や理論に対する視角、重視する部分が異なっています。そして、大学によって強い学派と弱い学派があるので、その大学で学んだ人は多くの場合、強い学派の考え方を持つ傾向があります(絶対とまでは言い切れませんが)。私が学んだ福井県立大学は新しい大学ですが、京都大学の先生が多く見えていました。そこで、必然的に京都大学経済学部に近い(個人的には、市場原理をあまり重視しない考えの先生が多い)雰囲気があったように思います。そのため、私の考え方も間違いなくその影響を受けているようです。

 そして、謝辞を見るとさらに明確になります。謝辞は、本文に書かれることはほとんどなく、大半が「はしがき」(目次の前に書かれている)か「あとがき」(本の最後に書かれている)にあり、本文の外側にあります。個人的な事柄だからつい読み逃してしまいますが(家族への謝辞は確かに個人的な事柄で読み逃しても問題ありません)、本ができるまでに、指導してくれた先生や助言してくれた同僚、作業を手伝ってくれた院生などに述べられている御礼の言葉は意外に重要です。スペースの都合で数名から十数名に絞られますが、実名が挙げられています。

 謝辞には、著者の研究どのようなプロセスで完成したのか、つまり誰の指導を受けて、また誰からの影響を受けているのかが分かるのです。多くの場合、指導の先生はその分野の有名な大御所が挙げられます。大御所の研究内容を知っている読者も多いので、その著書にも反映されていることが想像できるのです(もちろん、指導の先生と違う考え方を持つ人もいますが、その場合は謝辞にもそう書かれていることが多いです。おそらく、大御所の先生に著書を寄贈して読んでもらうことをイメージしているからです)。

 このように、著者のプロフィールや謝辞は、本文の外側にあるもので、見逃してしまいがちなのですが、意外に重要なので読んでみてください。

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