土曜コラム「今週のニュース」第15回:都道府県ランキングをどう受け止めれば良いか?
今週も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
令和初公表!47都道府県「幸福度」ランキング-4回連続でトップに立ったのは”あの県”だった
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
幸福を数値化し都道府県別ランキングする試みは注目されている。結果よりもランキングの精緻化プロセスに注目してほしい。
偶然ですが、この日はランキングに関するニュースが他にも報道され、それぞれコメントをツイートしましたが、今回はこのニュースに絞って詳しく意見を述べたいと思います。
個人的な話ですが、私がこのニュースに注目するのは、トップに立った福井県に長らく暮らしていたからです。他のランキングでも福井県や県内市町村はトップクラスの常連になっていて、結果が出るたびに報道されています。そして、県も「幸福度日本一」をウリに、県の魅力を積極的に発信しています。
もちろん、私も福井県に長らく住んでいたので、住みよさは感じていました。今は東京に移りましたが、改めて福井の住みよさを痛感しているところです。個人的には、自家用車があれば自由に移動でき、便利に暮らすことができる点が東京との大きな違いだと感じます。
しかし、多くの県民の実感としてあるのは「幸福度日本一」というほどではありません。もちろん他のすべての都道府県と具体的に比べられる人は少ないでしょうが、実際に進学や就職では関西や中京・関東の三大都市圏に多くの若者が流出しています。それは決して幸福を手放そうとしているのではなく、むしろ新たな幸福(=希望)を求めている人も多いと思います。私自身も福井の人口減少の一因になってしまいましたが、もちろん不幸になりたくて移ったわけではありません。人口減少、地方消滅の危機は、幸福度日本一の県であっても同じなのです。
ですが、そもそも幸福が何を表すかは人によって違うでしょうし、同じ人でも年齢や周囲の変化によって変わってくるでしょう。したがって、ランキングで日本一となっても、都道府県を同じ尺度で、しかも外部から評価されても、実感と異なるのは当然だと思います。結果に一喜一憂しても意味がないと思うのは、このためです。
しかし、だからといってこうしたランキングに意味がないとも思いません。幸福を多面的に捉えて総合化することは、私たちの人生の選択そのものでもあるからです。したがって、重要なのは自分なりの尺度を考えるきっかけとすることと、ランキングを精緻化するプロセスの方ではないかと思います。実は、こうしたランキングは何度も見直しが行われています。幸福を表すデータに新しいものを取り入れたり、適切でないものを外したり、もちろんデータも最新のものが入ってきているのです。このように、幸福の意味を問い直す作業のプロセスを知ることが、自らの幸福を考えるうえで、また住民の幸福に寄与する政策を立案するうえで貴重な示唆を与えてくれると思います。
その意味では、このランキングは福井県が4回連続でトップに立ったとはいえ、データの見直しも行われています。福井県はそういう意味では、「どんな測り方をしてもなぜか上位に来る県」と興味深い(謎めいた)存在と言えるかもしれません。
個人的に、今後、年代別の幸福度ランキングを出してほしいと感じます。人々の大規模な移動は進学や就職、子育てなどがきっかけとなります。幸福度日本一の福井県も、若年層が大都市に流出するのは、彼らにとって幸福度の尺度が違うからではないでしょうか。人の動きと連動したランキングを作成すると、より実感に近くなるのではないかと思います。