金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第8回:つかみは大切

昔、ダチョウ倶楽部のギャグに「つかみはオッケー」というものがありました。舞台に出てすぐにお客さんの心をつかむような小ネタをした後に、3人がポーズをしてこの言葉を発しています。お笑いの舞台だけでなく、プレゼンの舞台もやはり、つかみは大切です。

もちろん、プレゼンの舞台でギャグをするということではありません。例えば、自己紹介の時に自分の名前を単に言うだけでなく、覚えてもらうために「〇〇とあだ名で読んでください」などがつかみになると思います。また、ある地方で講演をする場合にも自分とその地方の縁を紹介するとか特産品をほめるなど、聴衆に自分を印象づけてもらう話がつかみになります。

プレゼンは時間が限られることが多いのですが、やはりつかみがあると良いです。そこで、例えば興味を誘うチーム名を付けて、その由来を説明するとか、プレゼンの内容をインパクトのある一言で凝縮し「題して、〇〇大作戦!」など最初に示す、などがあるかもしれません。タイミングは、できるだけ早い方が良いでしょう。

なぜ、つかみが大切なのでしょうか?それは、聴衆に「この人何するんだろう」「話が気になる、早く聞きたい!」という気持ちにさせるからです。第一印象は大変重要です。「つまらなそうな話だな」と第一印象で感じられてしまうと、最初から聞く姿勢が前向きにならずそれだけ反応も薄くなってしまいます。それがプレゼンターに伝わると、「聞いてくれていない」と感じてしまい、トーンダウンしてしまう可能性もあります。そうなると、さらに反応が薄くなり…という悪循環に陥ってしまうのです。逆に言えば、つかみができていれば好循環になるのです。

このような好循環や悪循環は、聴衆が自分を護るための行為とも言えます。最初のつかみで聴衆が「聞きたい」と感じたら、最後に「聞きたいと思って良かった」と思うために、あえて反応を良くしている面もあるからです。逆に、最初のつかみで「面白くなさそう」と感じたら、最後に「聞かなくて良かった」と思うために、あえて反応を悪くしている面もあります。自分の感覚を正当化する反応と言えるかもしれません。

最近オンライン授業が続いているので私も実感していたのですが、やはりオンラインでは相手の反応がつかめず、トーンダウンしてしまいがちです。対面の時に(全員ではありませんが)身を乗り出してくる学生がいると、私もその気になって調子が出てきます(出すぎて収拾がつかなくなることもたまにありますが…)。そのきっかけをつかめるかどうかは、やはり出だし、つまりつかみなのです。

ダチョウ倶楽部の「つかみはオッケー」という言葉は、実は「すべてがオッケー」ということでもあると思います。プレゼンの極意としても重要です。

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