土曜コラム「今週のニュース」第30回:自治体トップの給料・ボーナスカットは有効?
今週も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
「パフォーマンス」との批判もある一方で、「率先する立派な姿勢」との評価もある。結局、具体的な対策がしっかりしているかどうかで、月給・ボーナス減への認識も大きく変わる、ということだろう。
新型コロナウィルスへの対策で、国も自治体も多額の財政支出を行っています。国の対策が数十兆円にのぼり、赤字国債で対応していることは、ニュースでも大きく取り上げられています。一方、自治体の対策は自治体の規模にもよりますが数億円~数百億円の単位で、財源も国からの交付金か貯金(基金)の取り崩しによるものです。同じ新型コロナウィルス対策でも、国と地方でかなり対照的な点もあることが分かります。
今回のニュースは、自治体のトップが自らの給料やボーナスをカットしている状況を報じたものです。ニュースからも分かるように、多くても数百万円なのでカットが財政面に寄与する部分はごくわずかです。はっきり言えば、財政への効果はほとんどないと思います。
しかし、政治家の給料やボーナスに批判の目が向けられていることも事実です。特に国会議員への風当たりは強いように思います。少しでも効果になるなら、自分が率先することで住民が励まされるなら・・・という思いでカットすることは、住民にメッセージとして伝わるものもあるのではないかと思います。
ただ、かえって逆効果になる可能性もあるので、注意が必要です。国民や住民にとって大切なのは、新型コロナウィルスへの対策そのものだからです。対策が素晴らしいものならば、国民・住民は賞賛するでしょう。その時、仮に給料やボーナスをカットしなくても「頑張っている人は貰って当然」と支持されると思います。逆に、対策が問題のあるものならば、仮に給料やボーナスをカットしても「小手先のパフォーマンスだけだ」「早く辞めて欲しい」と批判を大きくしてしまうでしょう。結局、大切なのは対策の内容であり、給料やボーナスのカットは内容への評価を良くも悪くも強めるものだ、ということです。
医療現場が厳しい状況にあると報道されていますが、病院経営も厳しさを増して給料やボーナスがカットされている例も見られます。現場の職員は命がけで使命を果たしているのに、処遇が伴っていないとモチベーションが大きく低下するのではないでしょうか。国民もそうした方々にこそ支援をすべきと考えるに違いありません。
行政のトップも、厳しい意思決定をいつも迫られています。「知事にセンチュリーが相応しくないと言えるのか?」といった議論もありましたが、相応の処遇が必要なのは変わりません。
トップの給料やボーナスのカットは、必ずしも住民の支持を得られるとは限りません。場合はよっては「処遇の水準として相応しくない」「重い責任を負いきれない」という認識を住民にもたらしてしまう可能性があるので、注意したうえで決断することが必要だと思います。