火曜コラム「オススメ書籍」第3回:柴田徳衛『現代都市論(第2版)』東京大学出版会

 これまでは新書を中心に紹介してきたが、これはハードカバーのアカデミックな著書である。発行は1976年で、ほぼ半世紀前の古い本だが、現代の都市が置かれている状況を理解するために議論の歴史的経緯を踏まえておくことは大変重要である。本書は、当時の都市論を代表する本と言えるので、ここで紹介しておきたい。

 当時の都市論は、大都市における過密がもたらす都市問題が中心であった。特に、企業活動や産業を優先した政策が進められた結果、その裏で生活環境が悪化していたことが重視された。具体的には地価の高騰によって狭小で遠隔地に構えざるを得ない住宅、都市交通の混雑、衛生環境の悪化など多面的である。それは、経済の成長による豊かな国の達成の影で進行している新しい貧困とも位置づけられる。

 私は幼少・学生期の10年強をを千葉県で過ごし、就職を機に福井県に移り20年以上暮らした。そして、数年前に福井県から東京都に転居した。都市と地方を往復してきた身からすると、本書で書かれている都市の混雑は、多少緩和されているのではないだろうか。衛生面でも特に不便を感じることはない(多忙で感じる余裕がないのかもしれないが…)。第一印象として、当時の都市論は「今は昔」といった感もある。

 しかし、東京への若者流入は依然として続いており、今後は高齢者の激増が見込まれている。しばらくすると高齢者の混雑による医療・介護機能の不足が懸念される。これから、新たな都市問題が発生すると言えるだろう。その時、本書はどのようなメッセージとなるのであろうか。

 先ほど都市の混雑は緩和されつつあると述べたが、それは決して当時の都市問題がまったくなくなったわけではない。また、緩和されたのも本書に示された解決策が実行されたからではない。むしろ、ほとんど行われていないのではないだろうか。

 したがって、これから高齢者の激増による新たな都市問題が発生した時、これまでの都市問題に新たな問題が加わって複合的なものになるとともに、解決策を示すことも困難を極め、実行されるとは限らない。問題が緩和するかどうかは、状況の推移を見守るしかないと言ったことになりかねないのである。現時点でできることは、問題が大きくなる前にできることを少しずつ進め、問題の発生を少しでも遅らせることではないだろうか。本書を読み終えて、そういったことを感じた次第である。

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