木曜コラム「公務員の仕事」第3回-税務部門:まずは証明書の発行

 話を市役所に入った当初にいったん戻したい。

 税務部門で私が最初にした仕事は、証明書の発行であった。市役所が発行する申請や証明書は、住民票や印鑑証明など多くの人におなじみのものもあるが、税務部門では課税(所得)証明書や納税証明書、固定資産税評価証明書など、住民にはあまりなじみがない多種多様な証明書を発行している。

 私が所属していた部署では、課税(所得)証明書の発行がほとんどであった。課税証明書とは、住民税の課税の算出根拠となる所得の種類や金額、そして適用される控除の種類や金額を表示し、その結果算出された税額を証明するものである。いつ証明書が必要になるのか。例えば、住宅ローンなどを借りる場合に、その人の収入がいくらあるかが証明書で分かるので、融資の金額を計算するための根拠として使われる。

 新人職員であった私が課税証明書の発行を任された理由は3つある。それは、①定型業務であること、②住民とのコミュニケーションが必要なこと、③課税の仕組みが理解できること、である。

 ①は、何も知らずに仕事に就いた職員がいきなり税金の計算などを行うことができないので、やり方さえ覚えれば誰でもできる一番簡単な仕事として証明書の発行を任されたのである。 今は、本人確認などが大変な手間になったが、当時はそれほどでもなかった。この仕事はすぐに覚えることができた。しかし、証明書を渡した時に申請した人から数字の意味や根拠などについて質問されることがあった。その時は、いいかげんな推測で答えることが許されない(特に税金の場合は)ので、上司に来てもらい、説明を代わってもらった。上司に感謝するとともに、自分が早く制度を身につけて説明でいるようにならなければいけないと感じた。

 ②は、市役所なので、やはり市民との良好なコミュニケーションをとらなければならない。証明書の発行は定型業務なので、コミュニケーションに慣れる最適の場である。ただし、時々変化球のような質問があったことは先に述べた。

 ③は、証明書に記載された数字から税額を算出することができるので、どのような計算で課税額が決まるかのイメージを証明書ですぐつかむことができる。仕事ではよく「要点をA4用紙1枚にまとめなさい」と言われるが、まさに証明書はA4用紙1枚で課税の仕組みが分かる優れた資料なのである。

 証明書の発行はそれを市民が申請したものに対応する形である。したがって、申請がいつ来るか分からない。さすがに申請の市民で大行列になることはなかったが、時々複数の市民が同時に申請をすることもあり、その時はどうやって短時間で発行するかなどを考えていた。対応しきれない場合は上司にも助けていただいた。また、昼休み中に市民が来ることもあったので、当番を決めて交代で昼は対応していた。

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