金曜コラム「私が学んできたこと」第3回:公共感覚を持て

 公共部門と民間部門が同じ種類のサービスを提供する場合がある。例えば保育サービスは公共・民間ともに同じサービスを提供している。その場合、それぞれ次のような特徴があると言われている。公共部門は、手厚いサービスで信頼性が高く料金も低廉なものの、コストが高くつくので効率性は必ずしも高くない。これに対して、民間部門は利益を追求するため、コストを抑えて効率性を高めつつ、一定水準のサービスを提供する。公共と民間の役割分担や連携でも、それぞれの特徴を生かした枠組みが提唱される。

 しかし、両者にはきわめて大きな違いがある。それは公共感覚をもつべき主体かどうかということである。 民間の保育サービスは、企業のなかでサービスが位置づけられ、 企業の経営としてサービスが提供される。したがって、民間の保育サービスが広い視野に立つとしても、企業の範囲までである。したがって、広い視野は必要だとしても公共感覚まで求められるわけではない。

 これに対して、公共の保育サービスは公共部門のなかでサービスが位置づけられる。 そのため、広い視野に立つとすれば公共部門全体、例えば女性の就労支援や教育、男女共同参画など公共部門が担う範囲に及ぶことになる。同じ保育サービスでも、公共と民間では背景にあるものが違うと言える。

 重要なのは、公共部門がそうしたことを意識して、つまり公共感覚を持って保育を位置づけ、サービスを提供することである。保育に限らずあらゆる公共サービスは、タテ割り行政のなかで、課せられた仕事(所掌事務)に徹することがルールになっているが、異動を繰り返していくなかで広い視野も養われている。多様な分野で蓄積された経験を公共感覚として常に持ち、広い視野から仕事を捉えて質の高い公共サービスを提供しなければならない。それが、民間とは異なる公共部門の大きな意義である。

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